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鈴木貴美一新ヘッドコーチの“覚悟” バスケ

 「“短期間で結果を残すのはお前だ”と託されたと思っています」
 新ヘッドコーチ発表会見では、アジア大会の代表メンバー表がまず配られ、それから鈴木貴美一新ヘッドコーチがなぜこの12名を選んだかを説明していった。

 さらにこの大会について話し、今後のチームについて話すのを聞いていくうちに、鈴木ヘッドコーチが固い決意をもってこの場に臨んでいることがひしひしと伝わってきた。

 「今はチーム(アイシン)の世代交代を進めるのに大変な状況なのですが、日本が頑張らなければいけない時に、僕の名前が何人かの口から出て、お前に託したいという話をもらったときに、そこまで言われたならやらなければならないという使命感を感じました。ここ5・6年たまたまうちのチームが1番勝っていたので名前が挙がったのでしょうが、国を代表するチームなので、頑張らなくてはという気持ちでいっぱいです」


 使命を持った鈴木ヘッドコーチが話す自身のスタンスは、どれも明確だった。


 まず兼任ヘッドコーチであることについて。登壇して1番最初に「アイシンの鈴木です」と自己紹介したが、それは専任・外国人コーチを推す声が多いのを承知した上で、「サッカーと違いバスケットはシーズン中に国際試合がないので兼任でも可能。兼任コーチは国内リーグで選手達を常に見て特性を把握できるのが最大のメリット」と強みがはっきり言えるからだ。


 次に選手選考について。「基本的な基準は国内リーグで活躍していること。それに加えてメンタル、技術含め海外で通用するか、また代表の大会は連戦が多いので年齢的なことも含めて選びました」。現在スーパーリーグでチームの主力として活躍するベテラン選手7人に、世界選手権でも活躍した若手5人という構成は確かにその基準をクリアしている。激戦区であるガードポジションについては、「自分のそば(アイシン)にいる選手」という条件も加わった。この理由は次を読めばわかる。


 自身に期待されていることについて。
「就任はしましたが急な話ということもあり、いつまでということはまだ聞いていません。来年も僕がやれる保証もない現状からいうと、ナショナルチームを数年越しで強くすることを今は考えていられません。とりあえず12月のアジア大会に向かって、限られた練習期間の中で1番の成績を求めるためにはこのメンバーがいいと選考しました」
 大会は就任から2ヵ月半後、強化合宿は2回しか組めないが、石川常務理事らが期待する結果は“優勝”。それに近付くためには、経験のあるベテラン選手、特に自身のバスケットをより理解している自チームの選手を選ぶのは当然だろう。
「アイシンが年齢の高いメンバーで優勝を重ねたので、ベテランが好きというイメージがあるかもしれませんが、若い選手でやれれば1番いいと思うし、そのためにメンバーに合った効率のいい練習をしなければいけないと思います。もし今後もやれることになったら当然選手の入れ替えも、大きくはないでしょうがあると思います」

 アジア大会の登録期限が迫っているため、23名の候補から急ピッチで絞り込んだが、この12名からは参加の意思を得られたそうだ。
「自分が選考した選手が気持ちよく参加してくれることがまず1番の要望だったので、幸先がいい、良かったとほっとしています。ここ10年ほど辞退などあったのですが、今回来てくれるというのは選手も悔しい思いをしているのかな、北京に行きたいと思っているのかなと思いました」


 また、日本代表が進むべき道についても、はっきりとしたビジョンがある。


 鈴木ヘッドコーチが何度も口にしたのは、「日本人は体格的に負けている」ということと、「欧米の強いチームは無理なシュートを打たない」ということ。よって、鈴木ジャパンのコンセプトは「一生懸命頑張るのは当たり前として、考えながら1番確率のいいディフェンス・オフェンスをやる」こと。緻密さという日本人の特性を生かし、「この選ばれた選手達に、一番最高の状態のパフォーマンスをさせることが僕のコーチングの仕事だと思っています」。

 どんなバックアップを望むか、と聞かれたときは、「急な要請だったので頭の中が全て整理されていないが」「もし、僕が北京五輪予選までやるとしたら」と前置きしつつも思い描いていることを教えてくれた。

「ヨーロッパのリーグを見ると国内外の選手が入り混じってタフな試合をしており、選手はその中で生き残っていくため非常にハングリー。対して日本は国際ゲームの経験が少ないと思うので、予選の前に国際ゲームをやって経験を積ませてほしいというのが最大の願いです。それもできれば海外、日本のように全て段取りされている状態ではなく、日本にはないような体育館で、日本のご飯を食べないでそういう試合をしたい。特に言うならヨーロッパです。なぜなら、ヨーロッパは能力でいえばナンバーワンのアメリカに対抗しようと、ここ数年チームでやるスタイルをずっと研究し、すごい練習をして強化しているからです。前回のコーチもヨーロッパ遠征を行っていましたがそれは非常にいいことだと思うし、そういったスタイルや先に言ったハングリーな選手達に触れ合うという国内で経験できないことを経験させてほしいなと思います。
環境等については、今までもずっと協会が色々考えて環境作りをしてきたと思うので、特に問題ないと思います。やはり選手達がプライドを持って日本代表に行きたい、日本のために頑張りたい−自分のために頑張ることが日本のためになることですが−という組織にしてもらいたいと思います」


 パブリセビッチ氏が日本に残した最大のもの−代表に対するプライドを、鈴木ヘッドコーチは受け継いでくれそうだ。そして何より、これからやっていかなければならないことをわかった上で、現状でできる限りを尽くし、望まれている結果も残そうとしている。

 応援したい。


取材・文 北村美夏 2006年09月13日
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