<バスケットなお仕事> 1ヶ月に渡るキャンプを支えたスタッフにスポットを当てました。
〈1〉貝塚宗義マネージャー 
〈2〉中村由多香トレーナー 
〈3〉山本明コーチ(愛知学泉大) 
〈4〉楠本賢通訳 
〈5〉児玉善廣コーチ(仙台大) 
〈6〉ジェリコ・パブリセビッチHC 
〈番外〉松本美也子MG(ろうバスケ男子日本代表)

<バスケットなお仕事〈1〉>〜貝塚 宗義マネージャー(1980年生まれ 東海大出身)
スケジュール確認から時にはシューティングのパッサーまで、常に走り回りながらも優しい笑顔を絶やさず、選手・スタッフから「貝さん」と慕われている貝塚マネージャーに聞いてみました。

Q1.マネージャーになったきっかけは?
「大学4年の時に選手からアシスタントコーチになって、バスケットとの違う関わり方が見えてきたんです。それで就活を一切せずに勉強させてくれるところをひたすら探していたら、去年の4月に『やってみない?』という電話を頂きました。」

Q2.担当している仕事は?
「施設探しから使用料支払い、相談しながらスケジューリング、プレス対応など現場での窓口、協会と現場の橋渡し役、情報発信、水くみ、モップ、片付け、A代表では洗濯も。HCの買い物にも付き合って冷蔵庫とか僕が選んだし(笑)。ある意味何でも屋。そしてスタッフとプレイヤーをつなぐ潤滑油でもあります。」

Q3.選手の皆さんはどんな感じに見えますか?
「びびってるでしょ〜(笑)。でもだいぶ慣れてきて、動きも良くなってきたと思いますよ。」

Q4.マネージャーでよかったと思うことは何ですか?
「監督の理想に近い環境に持っていけた時ですね。正直ぺーぺーなのでコネなくてつらいんですけどね(笑)。」

Q5.今後について
「やっぱり強くならないといけないのは代表だし、そういう意味で現場は大事です。ここでしっかり勉強して、今色々考えているアイディアを実行していければいいなと思っています。」

<バスケットなお仕事〈2〉>〜中村 由多香トレーナー
スタッフの中の紅一点。はきはきとした語り口とテ−プの巻きっぷりを披露しつつも、厳しい練習中選手と目線が合ってしまうお母さん的存在の中村トレーナーに聞いてみました。

Q1.トレーナーになったいきさつは?
「もともとスポーツマンシップにいて、10前に依頼がきたのがきっかけです。」

Q2.担当している仕事は?
「テーピング、ストレッチ、水くみ、片付けなどなど。アイシングは作るけれど自分で巻かせています。ストレッチもアップに含まれているから、自由時間にもう少しやって欲しいというときやってあげるくらい。練習でやってしまうと全員にしなければおかしいでしょう?自分でできることは自分でやる、というのはジェリコHCの方針です。」

Q3.選手の皆さんはどんな感じに見えますか?
「真面目で一生懸命!今時の若人はって言われるけど見た目で判断するなってことだよね。本当に今までで一番真面目なんじゃないかというくらい。そして、おとなしい(笑)いい意味でも悪い意味でも。」

Q4.家庭との両立は?
「両立というか、一つずつという感じ?年に半分はこっち(代表)にいるから、その時はこっちで、家にいる時は家の事をする。偏ってるの(笑)。ひとつのことしか出来ないからね。その点では本当に夫に感謝って感じだね。」

Q5.トレーナーでよかったと思う時は?
「やっぱり試合に勝った時だね。ジャパンではなかなか少ないんだけどね(笑)。」

Q6.逆にトレーナーで大変なことは?
「うーん、大変というか仕事だからね。怪我人が出た時は大変といえば大変かな。怪我人が出ないようにするためにいるのがトレーナーだからね。」
(3月6日インタビュー)

<バスケットなお仕事〈3〉>〜山本 明コーチ(愛知学泉大学)
ウォーミングアップを任され、選手と一緒に走り、大きな声で盛り上げていく。さらにボールを使っている間はマメにメモ、と熱心な面を見せる一方で、選手がドジを踏むと必ず突っ込みを入れる山本先生に聞いてみました。

Q1.ウォーミングアップは何を参考につくっているんですか?
「特に何も。池内先生と相談して作っています。大体流れは出来ていくからね。」

Q2.選手の反応はどう思いますか?
「『キツイ』と言っているけど、逆に一度それくらいまでやらないと後で体が動かないか
ら、ちょうどいいんだな、と。だんだん線より前に出てきてしまうのも、流れをきってまで直させるほどのことではないです。」

Q3.ご自身も愛知学泉大の監督ですが、ジェリコHCのやり方をどう見ていますか?

「こういうやり方もあるんだな、と新鮮な感じですね。まず基礎をやらせて、どのくらいできるか力を見る、という。」

Q4.練習中によくメモされていますが、どんなことをメモしているんですか?
「まず疑問に思ったこと。後で聞くのに忘れないようにね。あと、自分の学校で生かせそうなもの。選手に後で言うために・・・・・・というのは思っていないです。」

Q5.この合宿に参加している選手たちはどうなっていって欲しいと思いますか?
「どんどんA代表に入っていって欲しい!今は1回1回の練習を大切にやっていくしかないけど、能力が高く、可能性を持っている子ばかりだから。こっちがあえてより多くの試練を与えていかないとね。どの年代でも代表に入る子が出てきて欲しいし、出てくると思うよ。」
(3月11日インタビュー)

<バスケットなお仕事〈4〉>〜楠本 賢通訳
ジェリコHCの指示を素早く簡潔に訳し、それ以外の時もHC並に選手に目を配っている、楠本通訳に聞いてみました。

Q1.通訳になったきっかけは?
「2002年のサッカーW杯の時、クロアチア代表についていたのが監督に伝わって、それで来てくれないかと。でもその時はJリーグのクラブとの契約がまだあったので、それが終わってから、こちらに来ました。」

Q2.ご自身はバスケットをやっていたんですか?
「中学から高校2年生くらいまでやっていましたよ。でも別に普通の(笑)選手でした。クロアチアは身長とかも関係あるしね。」

Q3.そんなこと訳せない!と思ったことはありますか?
「日本語には存在しない言葉を言われた時ですね。日本語ではけなすにしてもせいぜい“バカ”くらいだけれど、クロアチア語にはもっと比べものにならない言葉があるので(笑)」

Q4.HCの素顔は?
「心理学者ですね。わざと褒めようとしているわけではなくて、本当に、選手やスタッフの心を読んでいるし、汲んでいます。人間として憧れています。」

Q5.通訳で大変なことは?
「特にはないです。あえて言うなら、なるまでが大変かな。言葉をたくさん知っていないといけないので。」

Q5.通訳で良かったことは?
「やっぱり、JのクラブやサッカーのW杯を身近で経験できたというのもそうだし、またこのバスケットボールでも、こうして代表のために何かをできるチャンスを与えられていることですね。」
(3月12日インタビュー)

<バスケットなお仕事〈5〉>〜児玉 善廣コーチ(仙台大学)
「まだまだ若いモンには負けらんないよ!」と言って、大きな瞳を光らせ、さり気なくアドバイスをしている児玉先生に聞いてみました。

Q1.このスプリングキャンプという試みはどう思われますか?
「今までこういった長期合宿はなかなかなかったので、本当の意味で選手の能力がわかっていいよね。選手の育成、モチベーションアップにもつながるし。」

Q2.ジェリコHCのやり方はどう思いますか?
評価の仕方が違うなと思いました。体力的にきついメニューをやって、それでメンタル

を見ているんだよね。」

Q3.参加選手の印象は?
「能力は高いけれど、選ばれているのは偶然に過ぎなくて、もっとチャンスのある選手がいるかもしれないから、もっと危機感というかプライドを持ってほしいな。」

Q4.この合宿を通して選手に変化は見られますか?
「やっぱりこうしてもまれる環境に置かれることで意識が変わってきているよね。世界に通用するのはそれでもまだ簡単ではないし、指導者もこういった環境に置かれることが必要になってくるけれど。」

Q5.ご自身はどんなことを学びましたか?
「我々には指導者としての経験もそれなりにあるから、99%は同じことを考えているんだな、自分のやっていることはこれでいいんだな、という再確認です。それは経験が増えると99.9%・・・と増えていくけれども、でもこの合宿に参加したことで、後の1%の、自分にないもの、考えや人などに出会えました。」
(3月18日インタビュー)

<バスケットなお仕事〈6〉>〜ジェリコ・パブリセビッチHC(1951年生まれ)
時間厳守・水飲みも認めた時だけ、と厳しさを発揮していると思えば、選手が1対1で負けて悔しがっていたり、互いに冗談を言い合ってメニューを乗り切るのを微笑みながら見守っている、ジェリコHCに聞いてみました。

Q1.日本代表を引き受けた理由はありますか?
「スポーツ的なチャレンジです。日本のバスケットで結果を残そうと思いました。」

Q2.最初の1年間を振り返ってみていかがですか?
「練習のレベルなど、変えないといけないことがまだあります。でもそういった変化、セレクションを重ねていけば、いい選手を出していけると思います。」


Q3.日本の印象は?
「非常に文化レベルが高いですね。来る前に日本についての知識は得ていたので、そんなに驚くべく事はなかったです。」

Q4.この合宿で採用している方法は、今までやってきたものと同じですか?
「そうです。何年も前から、まず足りないところを発見して、磨いていく、というやり方です。何かの試合の準備なら、戦術もやります。」

Q5.この合宿に参加しているメンバーはどう思いますか?
「大きな成長をしてくれました。非常にこの先が楽しみです。しかし、まだ足りないところもあります。この合宿で発揮しているような集中力・レベルで努力を続けたなら、素晴らしい選手になるでしょう。」
(3月19日インタビュー)

<バスケットなお仕事〈番外〉>〜松本 美也子マネージャー(ろうバスケットボール男子日本代表)
マネージャー業勉強のため、朝6時に愛知県を出発してきたという、とても表情豊かで筆談の字も丁寧な松本マネージャーがインタビューに答えて下さいました。

Q1.ろう(聴覚障害)バスケットは、どんな特徴がありますか?
「ルールは健常者と何ら変わりはないので、試合も出来るんですよ。ただ、審判が笛を吹いた時それが聞こえなくて続行してしまうことがあるので、聞こえない人だけでやる時は審判員に黄色い手袋をしてもらっています。全国にチームは男子が15、女子が5くらいあります。まだ歴史が浅く、人口も少ないですね。」

Q2.日本代表の貝塚マネージャーはどんな印象でしたか?
「質問にとても丁寧に答えてくださいました。朗らかで親しみやすくて、選手からも慕われているみたいでさすがだなと思いました。」

Q3.ご自身はバスケットをやっていたのですか?
「はい。4年ほどガードとしてやっていましたが、2年前膝の故障によりマネージャーに転向しました。」

Q4.マネージャーをしていて良かったこと、大変なことはなんですか?
「選手に「ありがとう」と言われることが最高です!大変なことは1人しかいないのでドリンク作りに時間が掛かってしまうことですが、手伝ってくれることもあるのでそう大変ではないです。」

Q5.スプリングキャンプの選手はどんな印象でしたか?
「やっぱり個々の能力がとても高いですね!シュート率も良いし。私達のレベルはここまでは高くないかもしれませんが、頑張っていますよ。」
(3月17日インタビュー)

 

 

※日本ろうバスケットボール協会HPで、代表チームのメンバー、スケジュール等が見られます。都内には、5月に合宿・練習試合のためにまた訪れるそうです。

<取材・文 北村美夏>
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