<第44回関東大学バスケットボール新人戦>

第44回関東大学バスケットボール新人戦は18日、代々木第2体育館で残りの準々決勝を行い、どの試合も熱戦となった。
拓殖-法政は法政が自在のオフェンスを見せ、専修-日体は日体が全員攻撃・全員ディフェンスでそれぞれ快勝。日大-東海、早稲田-筑波は激しい守り合いの末、東海・筑波が制した。

勝った法政大・日体大・東海大・筑波大は明日の準決勝へ進む。5-8位決定戦は拓殖大-日大、早稲田大-専修大の組み合わせで行われる。



<第44回関東大学バスケットボール新人戦 準々決勝>
6月18日(金) 会場:代々木第2体育館

TEAM
 



 
TEAM
93
21
1st
11
55

 
法政大
29
2nd
13
拓殖大
24
3rd
21
 
19
4th
10

スターティングメンバー
法政大:#7末廣、#9高久、#11福田、#14山田、#16深尾
拓殖大:#4長谷川、#6仲村、#7猪崎、#10森、#12佐久間

法政大は、拓殖大#4長谷川の3ポイントシュートで先制を許すが、すかさず#16深尾がバスケットカウントと譲らず、第1クォーター残り5分30秒7-7と互角の展開。だがここで#9高久が拓殖大#4長谷川から2つ目のファールを奪い、ベンチへ追いやる。さらに#14山田、#7末廣が続けて3ポイントシュートを決め、残り3分17-9と一気にリードし、このクォーター21-11と優位に立つ。

第2クォーターも#9高久のポストからガード陣の合わせ、#7末廣の3ポイントシュートと面白いように加点し残り6分35-19とする。さらに残り5分拓殖大#4長谷川から3つ目のファールを奪うと、拓殖大の攻撃の展開を完全にシャットアウト。無理な1on1しかさせず、そのリバウンドを取って速攻を量産。残り2分44-24と20点差をつけ、さらに#9高久のインサイドで前半を50-24と圧倒する。

後半もこれ以上ファールの出来ない拓殖大#4長谷川を相手に#9高久の1on1、寄ればアウトサイドシュートと勢いを持続し、第3クォーター残り5分30秒62-31と30点差。この直後拓殖大#4長谷川から4つ目のファールを奪うと、攻守ともにインサイドを支配。第4クォーターは互いにシュートが落ちたが、残り5分から#12高橋らの3ポイントシュートが立て続けに決まり、拓殖大#4長谷川に終盤追い上げを許すも40点差の大勝でベスト4に名乗りを上げた。

法政大#9高久
拓殖大・池内監督
「今の力はこの通りということです。位置取りなどのディフェンスのポイントを意識して出来ていたかと言えば欠けていたし、オフェンスも経験が少ない分シュートセレクションが悪かった。
(チームの軸ながら2試合続けてファールトラブルの)長谷川は、準備不足。本人の意識が散漫なところもあった。ファールがかさんだらどうするかということをもっと勉強しなければならないし、こちらも教えていかなければと思います。
宇田も怪我の影響はないです。ただ積極的に行けていて、他の1年生もそうだったのでそこは順調ですね。あと2日終わればしばらく大会もないので、なるべく全員を出してリーグ戦への経験をつめるよう精一杯やります。」
法政大・#5高崎選手
190cm以上の選手が#9高久のみの中でリバウンドに貢献、要所できれいな3ポイントシュートも決めた。
「リバウンドとディフェンスは頑張ろうって思っていました。ディフェンスは、自分のマークマンとボールとをきちんと視界に入れるポジション取りと、ヘルプを意識しました。リバウンドは、そこが強ければ勝てると思うから皆で飛び込んでいきました。今、日本代表の遠征で他のチームの大きいセンターがいないので、自分にも取れるかなって。
3ポイントシュートは…入りましたね(笑)。普段から、良い流れでボールが来たら打ちますが、今日は特にオフェンスのリズムが良くて思い切り打てました。
明日・明後日は、いつもやっていること、練習でやってきたことができれば勝てる!と思うのでそれを皆で出して行きたいです。 」
『層は厚いけど』拓殖大・#14小下選手

 立ち上がりは互角の展開となるも、拓殖大のキーマン#4長谷川がファールトラブルになると一気に法政大のワンサイドゲームになった。2桁のビハインドとなってからの出場。しかし、小下のプレーはその点差を忘れさせるほどすがすがしかった。
「いつもはあまり出場機会をもらえないのですが、今日は前半の終わりと後半出られたので持ち味のディフェンスとスピードを生かしたプレイを出せるよう心掛けました。特に後半はチームのテンポが悪くシュートを打てていなかったので、自分のプレーで流れを変えられたらと思って積極的に動きました。カットインはフィニッシュを決められませんでしたが…」
と笑う。

そして2年生らしく、長谷川のこともこう気遣った。
「やっぱりチームの軸だけれど、調子の悪い時もある。そういう時頼りすぎないで、皆で
やっていかないといけないですね。ベンチの声なども含めてチームで戦うのが拓大のバスケットなので、明日・明後日はそういうところを見せたいです。」
 
 拓大と言えば、清水誠太・伊藤拓郎・熊谷渡とレベルの高いG・Fが3・4年にずらりと顔をそろえている。その中で175cmの小下までは今はなかなか出番がまわってこないが、こうして与えられた時間で自分のプレーを出し、ベンチにいてもチームのことを考えられる選手が控えているのはチームにとって大きい。


<第44回関東大学バスケットボール新人戦 準々決勝>
6月18日(金) 会場:代々木第2体育館

TEAM
 



 
TEAM
66
17
1st
18
60

 
東海大
16
2nd
8
日本大
20
3rd
20
 
13
4th
14

スターティングメンバー
東海大:#4石崎、#5阿部、#6内海、#7井上、#8松山
日本大:#4菊地、#5太田 、#9小野寺、#10香野、#15齋藤

第1クォーター序盤は互いに入れ合い、残り6分で6-8と東海大はリードを許す。しかしその後#6内海の3ポイントシュート、#8松山の速攻、#7井上のダンクと連続得点し残り4分14-8と逆転。だが日大#4菊地の1on1が止まらず残り1分を切ってから16-16と追いつかれ、#5太田のゴール下で再逆転を許す。残り1秒で井上がフリースローを得てこのクォーター17-18とする。

第2クォーターも立ち上がりに#7井上のリバウンドショットなどで22-18とした後は互いに点が伸びない。だが残り6分30秒、#8松山が連続でオフェンスリバウンドを取ると最後に自ら決め、さらに#6内海のアシストで連続得点し28-22とする。加えて#7井上のダイビングルーズを石崎が速攻につなげ、#6内海の3ポイントシュートで残り2分30秒33-24と抜け出す。その後日大#4菊地にフリースローを与えるがそれのみに抑え、前半を33-26とする。

しかし第3クォーター、日本大#5太田、#15齋藤の得点で残り8分35-32と分からなくなる。東海大は24秒クロックぎりぎりで何とかシュートを沈め、43-34まで持ち直すが、日大#15齋藤に再び3ポイントシュートを決められ残り4分43-39とする。その後互いに意地で3ポイントシュートを入れ返しあうが、日大#7嶋中のシュートはリングにはまってしまう。ジャンプボールシュチュエーションで東海ボールになると、代わったばかりの#18西垣がフェイダウェイを決めて残り3分50-42とする。焦る日大に対し#5太田へのダブルチームも機能し、53-46で最終クォーターへ。

第4クォーターは、互いに1on1のマークが厳しくなる中7〜8点差をキープ。しかし残り5分、日大#4菊地の速攻に思わずファールでカウントを奪われ57-52となる。さらに連続失点で残り3分59-56とワンゴール差。だがここで#6内海の3ポイントシュート、#8松山の1on1が決まり残り1で分64-60。ファールゲームとなるが、これをきっちり決めて、66-60で接戦を制した。

日大#5太田への
東海 トリプルチーム

東海大・#18西垣選手(写真右)
成長著しい1年生。接戦ながら出場時間をもらい、石崎を休ませた。
「チームの流れを崩さないようにということだけ考えていました。リバウンドが取れたら前を走ることしか頭になかったです。後は元気にやる(笑)。試合はあまり緊張しないタイプで、コートの中に入ってもベンチで見ている時とかわらずやれたと思うのですが、あまり覚えていないです…。(3ポイントシュートもきっちり決めたが)あれはノーマークだったので決めないと!と思いました。ディフェンスは苦手で、ボールを持たれたら止められない(笑)のでその前を頑張りました。東海は2年生がすごい人ばかりですが、何かの拍子で調子が落ちることもあるので、そういう時僕達1年生が盛り上げていきたいです。チームの目標は優勝ですが、ディフェンスから速攻というスタイルをマイペースにやっていけたらいいのではと思います。」

東海大・#8松山選手(中)
リバウンドに大活躍、今日の勝利の立役者の1人。
「リバウンドは普通にやっていたら取れた感じです(笑)。でもオフェンスリバウンドは積極的に行きましたね。点数は内海らが取ってくれるので、リバウンドに集中しました。(要所で1on1を決めたが)石崎に“やれる!”と言われたので、やってみたんです。自分はドライブが得意だからそれを生かせたと思います。
今、竹内がいないけれど、いたら自分は出られていないと思うので、チャンスと思って頑張りたいです。竹内のやっていたことを任せてもらえるのは自分しかいませんから!(笑)自分は無名だけれど、他チームの有名な選手にも負けていないつもりだし、竹内が帰って来た時に“俺がいないから負けたんやろ”って調子に乗らせてはいけませんから、是非優勝したいです。」

東海大・#6内海選手(左)
日大のエース#4菊池選手を抑えながら、自らも5本の3ポイントシュートを決めた。
「マッチアップした菊池選手は…やっぱりすごいですね。中も外もあるオールラウンダーでつきづらかったです。気をつけたこととしては、東海はヘルプやローテーションディフェンスを大切にしているので、1人でどうにかしようとせずに皆で守るということですね。結果的にはいい所悪い所五分五分って感じだと思います。
シュートの方は…ラッキーですよ(笑)。ディフェンスは得意ではないし。ゲームメイクは石崎に任せているので、ボールが来たら打つことを考えています。
今日みたいなロースコアゲームは東海のスタイルなので、こういうバスケットが出来ればまた勝てると思います。 」
『厳しい?楽しいですよ。』

  「走れ!」東海大#4石崎が大きな声を出している。
  その一方で、交代時や仲間のミスの後には笑顔を見せる。「あいつ試合前とか“楽に行こ、楽に”って言うんですよ(笑)」(#8松山)。そのどちらもが今までの試合では見られなかった姿だ。
「キャプテンとして…というのは特にないです。高校の時もそうでしたが、皆能力があって自分で考えられる選手ばかり。まとめる時はまとめますが、全てをやる必要はないんです。明るいやつばかりで雰囲気は最高ですよ。ゲームメイクするにしてもコミュニケーションが取りやすくてやりやすい。本当は上級生の中でも言えないといけませんが…。みんな仲が良くて、相手も知っているやつばかりだからやっていておもしろいですね。」
 この戦いを“おもしろい”と表現したのは石崎が初めてだった。
「今日の試合は自分へのマークが厳しい中で思うようにできませんでしたね。悔しいし良い勉強になりました。それから苦しい時に他の選手が頑張ってくれた。(日大の206cmのセンター)#5太田へのダブルチームディフェンスは効いたと思います。最初からやると慣れてしまいますが、やっぱり勝負どころではプレーさせたくなかったので。
竹内(譲次)がいないのは、確かにキツイです。でもいないのをどうこう言ってもしょうがないから。あいつも向こう(A代表欧州遠征中)で頑張っているだろうし、日に日にうまくなっているのがわかるので負けたくない。“いないから負けた”って本人に言われたくないですしね。
それでも他のチームが打倒東海!ときているのは色々なところで聞いて、嬉しいけれどプレッシャーもありますよ。優勝して当たり前、みたいなところがあるから。でも、一度コートに入ってしまえば楽しいし、気になりません。」

 そう気持ちでは思っていても、体は彼のプレーのレベルを如実に表している。試合後は何箇所ものアイシング、スタッフの手を借りての丹念なストレッチを行なう。
「いつものことですよ。気を使っている?いや、やらないと…ハードですから(笑)。今日は久々に休めましたけどね。いつもは少しセーブして40分もたせているんですが、今日は自分がやらなきゃって気負いすぎて、ディフェンスでボールを取りに行きすぎたり、後勝手に突っ込んでいっちゃったところもあってバテてしまいました。もう少し抜くところも覚えないといけないですね。
あと2試合、相手のプレーをさせないディフェンスを見せたいです。後はガードとしてしっかりゲームメイクすること。やっぱり試合が一番練習になりますからね。」
  “うまくなれる”と思えば、この厳しい戦いも、彼にとっては楽しい道なのだ。


<第44回関東大学バスケットボール新人戦 準々決勝>
6月18日(金) 会場:代々木第2体育館

TEAM
 



 
TEAM
 
66
11
1st
16
79

 
専修大
15
2nd
18
日本体育大
 
15
3rd
27
 
25
4th
18

スターティングメンバー
専修大:#6勝久、#7五十嵐、#11横村、#12田中、#13喜多川
日体大:#5高田、#6瀬木、#7松本、#8田中、#10樋本

立ち上がりはどちらもしばらく点が入らないが、先制したのは日体大。第1クォーター残り8分、#5高田の面取りをスクリーンに#8田中がカットインを決める。その後もどちらもディフェンスリバウンドを死守し、ロースコアな展開となる。その中で残り3分20秒#8田中が速攻でバスケットカウントを奪い12-6と抜け出すと、このクォーターを16-11とリードする。

第2クォーターも専修大のシュートが落ちる間に、積極的に1on1を仕掛けていき、残り7分22-11と差を広げる。この後専修大#13喜多川のシュートなどで22-19とじりじりと詰め寄られるが、#11宮島がミドルを決めて残り5分24-19と踏ん張る。その後再び守り合いとなるが、#5高田が1on1を決め残り3分26-19と均衡を破る。専修大#9浅野にバスケットカウントを奪われるも、怪我の頭部を包帯でぐるぐる巻きにして戻った#6瀬木の3ポイントシュートで追いつかせない。加えて#7松本が切り込んでバスケットカウントを奪い32-26とすると、ディフェンスがさらによくなり前半を26点に抑えきる。

第3クォーターは、専修大#7五十嵐がミスマッチを突いてくるがヘルプディフェンスで耐えると、アウトサイドが高確率で決まり残り8分39-30とする。守っても24秒オーバータイムを奪うなどオールスイッチで専修大の高さに対応。攻め手ては#5高田を盛り立て、その1on1で残り4分30秒48-34とする。1人1人がゴールに向かい、残り2分で専修大#12田中がやっとシュートを決めた時には57-36と20点差をつける。

しかし第4クォーター、疲れからディフェンスで半歩遅れファールがかさみ、#5高田も一瞬の隙に専修インサイドに裏を取られて残り5分30秒67-53とされる。だがその苦しいところでまたもや3ポイントシュートが決まり、72-53と押し返す。その後は専修大が焦ってマークのはずれていないうちに放ったシュートのリバウンドをおさえ、コート・ベンチ・応援席と全員バスケットでベスト4を決めた。

日体大#5高田


<第44回関東大学バスケットボール新人戦 準々決勝>
6月18日(金) 会場:代々木第2体育館

TEAM
 



 
TEAM
 
54
23
1st
18
69

 
早稲田大
10
2nd
19
筑波大
 
15
3rd
18
 
6
4th
14

スターティングメンバー
早稲田大:#5田上、#14風間、#18菅川、#20近森、#21前川
筑波大:#4小松、#5尾崎、#7畑田、#14山城、#15吉田

第1クォーター、早稲田大は#20近森のインサイド、#14風間の3ポイントシュートで加点するが、筑波大にも#5尾崎の1on1などを許し残り8分7-5とする。ここで#5田上がチャージングで2つ目のファールとなりベンチに退くが、代わった#4岩隈がいきなりスティールから速攻を決めて9-5と先行する。その後フリースローが入らず、その間に10-9と詰められるが、#21前川のドライブで残り5分14-9とすると筑波大のタイムアウト。その後は#20近森のゴール下、フェイダウェイシュートでつなぎ、23-18とする。

しかし第2クォーターに入ってもフリースローのタッチが戻らず、残り8分25-25とついに追いつかれる。さらに筑波大#15吉田、#7畑田に3ポイントシュートを決められ27-31となる。早稲田大は#20近森が孤軍奮闘し前半をなんとか33-37とする。

第3クォーター、#18菅川のミドルで残り8分30秒39-40と詰める。だがその後、筑波大のシュートが落ちるが、それを得点につなげられず、逆にリバウンドから加点され48-55と差が開く。

第4クォーターはワンゴールづつ決め残り7分30秒50-57でタイムアウト。その後早稲田のターンオーバーから速攻されるが#4岩隈がボールを下ではたいて守り、リバウンドをキープするが攻撃でヘルドボールに。もう一度早稲田ボールになるも#20近森がゴール下のプレッシャーが厳しくシュートを落としてしまうが、筑波大の速攻パスをカット、とさらに激しい守り合いとなる。その中で早稲田大ははやいローテーションから筑波大#5尾崎のカットインでトラベリングを取り、それを#20近森のミドルシュートにつなげて52-57とする。さらに筑波大#16木村の1on1でチャージングを取るが、タイミングでない1on1、ロングシュートを打たされてしまい点につなげられない。すると筑波大#5尾崎、#4小松に1on1を決められ、残り3分52-61と苦しくなる。#4岩隈がすぐにスピードで運んで#20近森にアシストし54-61で残り2分。#21前川がヘルドボールを取り、#4岩隈のパスカットは惜しくもファールとディフェンスで奮闘するが時間が過ぎていく。#20近森のフリーの3ポイントシュートは外れ、残り40秒からファールゲームに持ち込むが、「時間の無駄」と倉石HCに制され、残り10秒でプレッシャーを掛けるのをやめる。すると最後に突筑波大#15吉田のブザービーターでの3ポイントシュートが決まり、54-69で力尽きた。

筑波大#4小松

早稲田大・#4岩隈選手
「すごく悔しい。リバウンド、ルーズボール、ディフェンスの声というのをテーマにしていたのに、その点で筑波に完敗した。出だしは勝っていたけれど、ルーズで負けていて相手を勢いにのせてしまった。
( 69点はけして多い失点ではないが、54得点)オフェンスは、ディフェンスで圧倒して速攻で、というスタイルなのに、速攻が少なかったし、セットになってもパスがよくまわらなくて、最後はバテて声も少なくなってしまった。ベンチの声はすごく聞こえて、それに応えたかったのだけれど…。
これからの2試合、チームのできることを信じることが大切だと思う。それが出来れば負ける相手じゃない。ヘッドコーチも勝つために色々言ってくれているわけだから、なるべく2年生が引っ張って、自分達のバスケをしていきたい。 」
『逆境で勝て』 早稲田大

 早稲田大#20近森の左目の下が青く腫れているのがわかるだろうか。
「いてって思ったらこうなってた。」
この傷が、入学したばかりのパワーフォワードにかかる負担、そして早稲田大というチームの状況を物語っている。

 この日、ともにインサイドを担う2年生#5田上が第2クォーターはじめに左足首を痛めるアクシデント。インサイドで体を張るのは近森1人になり、さらにコートに立つ選手の比重も1年生中心になった。結果、ディフェンスでマイボールにしてもオフェンスを思うように組み立てられず、対照的に#4小松・#5尾崎という2人の2年生が軸になる筑波大に逆転されると再びリードを奪うことはできなかった。

 その苦しい展開のもと、ボールをひたすらゴールに運び続けたのがこの近森だった。2ポイントシュートは45本中27本、得点も54点中28点と全体の半分以上が彼によるも
の。その1on1にチームはずいぶん助けられたが、裏を返せば苦しい時に皆が共通してこれをやる、というものがないとも言えた。もちろん最初に固めるべきディフェンスでチームとしてまだ出来ていない約束事もあるのだろうが、それがなくてはこういった接戦をものにするのは厳しかった。

  オフェンスで焦り、そのミスから相手に楽なシュートを打たせてしまうトーナメントと同じ負け方。だが幸い、このチームには順位決定戦が残されている。そして、点差が離れてもゴールに向かうことをやめないこの男がいる。
  あと2試合、チームとしての成長が見たい。

<取材・文 北村美夏>

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