<プロ化検討委員会答申> 
 3月31日、日本バスケットボール協会は都内ホテルでプロ化検討答申の記者会見を行なった。

 「2007年をめどにプロ化することが望ましい」という答申を発表し、今後は今年5月に準備委員会を立ち上げ、具体的に準備に入るという。内容要旨は以下の通り。
 
  (答申書の骨子・プロリーグの位置づけ・第1段階案・スケジュールイメージ・準備組織の構築について・検討委員会メンバーは抜粋に掲載 JABBA公式ページへ)

<開会挨拶〜経緯説明>
岡田純氏(プロ化実行検討委員会委員)
「昨年10月から27回に及ぶ協議の結果、本日承認された答申は“2007年をめどにプロ化することが望ましい”というものです。ですがこれはプロリーグ設立発表会ではございません。この答申を受け、具体的に準備に入るという発表です。」

<登壇者挨拶>
石川武氏(日本バスケットボール協会副会長・専務理事)
「答申内容に依存はなく、理事会にて承認されました。日本のバスケットの普及発展はプロ化の流れの中が最適ということで、2007年をめどに新しい組織を作り具体的な作業に入ります。」
民秋史也氏(プロ化実行検討委員会委員長)
「一生懸命やりました。プロ化の話は過去10年、出ては消え出ては消えで結論が出ませんでしたが、今回はそういうことはあってはならないと思っていました。“常に世界と戦える日本でなければ”という方針のもと、五輪に常に出られるようにしたいです。
また、バスケットはサッカー・野球と並ぶメジャースポーツなのに地位が確立されていないのはおかしく、協会の力不足でしょう。だからプロを作るだけでいいのではなく、協会としては育成も考えて活性化していきたいと思います。
以上の五輪出場、メジャー化、育成のツールとして最適なのはプロ化だという結論になりました。これを日本における最上位にして唯一のプロリーグと位置づけます。」
杉浦良昭氏(同副委員長)
「まず13名の委員で現状把握につとめました。世界や日本、ミニバスからスーパーリーグ、地方、団体など喧々諤々の議論となりました。
そこから導いた仮説が理事会で承認され、委員の一員として嬉しく思います。
これから実行可能な計画のレベルに落とし込んでいきます。成果が皆さんにわかるように、“バスケット”を主語で語っていきたいです。」

<関連案件説明>
阿部克三氏(バスケットボール日本リーグ機構 専務理事)
新潟アルビレックスとさいたまブロンコスについて
「両チームに対し、脱退の申し出を再考するようJBL合同連絡会にて通達致しました。その回答は4月8日までとし、4月13日のJBL理事会にて議論されます。なお、同日のJABBA理事会でもこの案件があがるでしょう。」

4/13追記・理事会にて両チームの脱退が承認されました。

<質疑応答>
・新潟アルビレックスとさいたまブロンコスとの話し合いはあったか
「答申の最後のメンバーを見てもらえればわかりますが、新潟の河内氏は検討委員会のメンバーです。さいたまとの接触はありませんでした。
もちろん、同じバスケットをやりながらこうなったのは最高統括団体として力不足だったと申し訳なく思います。」(民秋氏)

・チームの反応は
「普及と強化育成の中で活性化するためにプロは避けられない、というのは(委員会は)全員一致でした。これからヒアリングをしながら、条件を満たし是非参加したいなら受け入
れます。スーパーリーグ・日本リーグはもちろんそれ以外も含めです。それは今後の進め方の課題と認識していますが、各チームについては現在いっさい問題は出ておりません。」(杉浦氏) ※各チームには報道資料と同じものが事前に配られています

・スポンサーについて
「まずフレームを作って、ヒアリングをし、原案を作ってそれをチームに見せ、それからスポンサーというのが流れというものです。先にコンテンツが固まらないといけません。これまで10年間もたもたしましたが、今回やると決めたんです。これから中身をきちっとまとめます。中身が最終的に決まったという段階ではないので、スポンサーからの話はまだありません。」(民秋氏)

・プロ化に向けて何が変わるのか
「まず統括本部が独立した社団法人の形をとり、会員はプロ集団、それもバスケットのマネジメントに精通した集団になります。それから各チームの負担が増えることのないようにします。」(民秋氏)

・bjリーグとの関係については
「全ての面で一緒にやらせて頂きたいと思っております。リーグをどうするのか私達は中身がまだはっきりしていませんし、向こうのアイデンティティも確立できていません。チームが一定の審査基準を満たせば問題はありませんので。
(bjリーグとの協議はあったのか)やっていません。独立してやっておられるので、協会は言及できる立場にありませんし権利もありません。」(民秋氏)

・最低8チームとあるが集まらなければ延期もあるのかなどチーム数について
「それはこれからです。設立準備委員会で検討致しますので今はどのチームもまだ手を上げておりません。8チームにならなかったら?ということですが、それは今は8チーム以上になるようにしっかりやります。今のところチームが減るとは考えておりません。」(杉浦氏)

・今の福利厚生の形のままでもよいのか、また地域密着とするなら企業名はどうするのかなど企業との関係について
「チームを会社の外に出すのも1つです。今も社員だったり契約だったりなどチームによりけりなので、それを一気に1つの方向にというのは難しい。今のままというのも1つの選択としてあります。
チーム名については、先輩のJリーグは企業名をつけていませんが、それが良いのか悪いのかという検証はされていません。よって5月からの委員会での検討事項の中に明記されています。」(杉浦氏)

・bjリーグと日本代表について
「日の丸を背負うような素晴らしい選手が出てきたら、それは当然やってもらいたいです。」

・足踏みをしてきた中で、なぜ今回はプロ化できるのか
「自慢していいですか。私達は今回本当に一生懸命頑張りました。その結果と理解していただきたいです。また内部事情として、そういう雰囲気が出てきていたのでしょう。過去10年で200チームもの企業チームが廃部になりました。ですが社会・経済状況が変化して、スポーツの価値が見直されてきた。日本というのは急激にできないんですよ。段階を踏んでコンセンサスをとって、というのが日本のやり方です。日本と欧米とはやり方が違うのです。」(民秋氏)

・第一段階案にプロチーム保有企業の負担額についての記述があるが、具体的には
「いくらかは言えませんが、人件費、これが1番多いです、旅費交通費、支援部隊の費用ですね。
もし赤字となったら長続きしないのでそれはメスを入れます。ただ段階を踏んでというのが今回の基本姿勢です。」(杉浦氏)

<答申要旨>
 答申は、検討委員会委員長である民秋氏の“日本バスケットボール活性化におけるトップリーグ・プロ化の有効性について”という「総論」から始まり、これは氏の挨拶にほぼ要約される。

  次の「予見」では、まず会見でも挙げられた“バスケットボールの普及と強化・世界で常に戦える強い日本代表の育成”、そして“日本協会の国際的地位の確立・日本のスポーツ文化振興への貢献”という(1)日本バスケットボール協会の使命が示されている。続いて(2)日本におけるバスケットボール界の現状の分析。ここでは、他のスポーツ・他の国の流れであるグローバル化・高度化から遅れを取っている、ということがリーグ発足時や5年前のチーム数・登録人数との比較、同じように5年前や他の競技の収入・放映権料との比較グラフもまじえ導き出されている。その後(3)日本のバスケットボール界のプラスファクター(60万人の競技者登録人数など)・マイナスファクター(メディア露出の少なさなど)も数点ずつあげ、そこから(4)活性化の考え方につながる。それによると、まずメリットとリスクの一極集中を解消しようという「バスケットボールのグローバル化」があげられる。メリットを上げればバスケットボールの社会的価値が高まり、リスク=責任をリーグ・各チームで分かち合っていくことがバスケットボールの世界と市場を広げていく。これが、普及・価値向上というミッションを満たす。もう1つあげられるのは「強化に基軸を置いたプロ化」。プロの基準を世界と戦う力に置けば、強化・強い代表の育成というミッションを満たす。そして、その「スポーツ側から見た強化」が「ビジネス側から見たエンターテイメント」という側面と同じ歩幅で大きくなっていけば、最高のエンターテイメント=最高のゲームという形で日本のバスケットボールが前進していく。

  ここまででプロ化という道筋を見出されたので、次は「想定目標としてのプロリーグ」。まずリーグ形態としては、日本バスケットボール協会が認定する、国内最上位にして唯一のプロリーグ。そして、スポーツのグローバル化に対応できるようNBAなど世界のプロリーグとも国内の各団体とも直線的につながれた組織構造を持ち、拡大していけるよう日本バスケットボール協会に登録したチームならオープンに参入できるような条件を設定する。また、法人格を持ち、興行権を保有し放送・ライセンス事業を推進するなど独立した運営構造を持つものとする。チーム(競技部門とフロントを統合したもの)形態としても条件を満たしたアリーナを保有するなど指針があげられている。次に契約や移籍についての所属選手の位置づけも示されているが、サラリーキャップ制度、ドラフト制度など是非の検討項目もある。そしてチーム数や試合数、プレーオフ・オールスターの概要、他国との交流などリーグ編成とシーズン例。他に収支案、審判員の特別ライセンス制度など様々な目標が掲げられている。

  そして、「実現に向けて必要とされる調整事項」。日本バスケットボール協会及び傘下団体について15項目、プロリーグ及びプロリーグ参加希望チーム(企業)について13項目が、ここに示されている。

  以上を踏まえ、抜粋にもあるような「第一段階案」「スケジュールと組織の提案」が示されているが、これは5月に設立される予定の準備委員会で詳しく詰められていく。

<取材・文 北村美夏>
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