<平成17年度関東実業団バスケットボールリーグ戦>

関実リーグ戦1部・波乱の第3戦!

4月9日から始まった関東実業団バスケットボールリーグ戦。6月4日からは1部リーグがスタートした。1次リーグでは8チームの総当りで行なわれ、続く2次リーグは1次リーグの上位4チームと下位4チームに分かれそれぞれ総当りで対戦する。最終日は7月18日(祝・月)代々木第二体育館で行なわれる。

6月11日(土)は代々木第二体育館で第3戦が行なわれた。1位−6位・2位−5位・3位−8位・4位−7位の対戦のうち、1位の横河電機本社のみが順当勝ちし、その他の上位3チームが敗れる波乱の1日となった。

日程・結果は関東実業団バスケットボール連盟(代々木第二体育館・駒澤体育館での有料ゲームの入場割引券あり)


写真:相手のオフェンスファールを取って喜ぶ東京電力#5阿部

関東実業団1部リーグ・各チームの勝敗(6月11日終了時・順位は昨年のもの)
       
1−横河電機本社
3勝0敗
2−日本無線
2勝1敗
3−東京日産
1勝2敗
4−曙ブレーキ工業
1勝2敗
5−大倉三幸
3勝0敗
6−三井住友銀行
0勝3敗
7−三井住友海上
1勝2敗
8−東京電力
1勝2敗

<ピックアップ・ゲーム・1>
TEAM
 



 
TEAM
56
10
1st
16
61
日本無線
12
2nd
9
大倉三幸
(2位)
16
3rd
20
(5位)
18
4th
16


ロースコアの接戦は日本無線が流れを引き寄せきらず 大倉三幸の粘り勝ち

スターティングメンバー
日本無線:#10箱崎、#13小山、#15尾崎、#16樋渡、#18鈴木
大倉三幸:#4近森、#5有田、#10奥、#15遠藤、#16山本

 怪我で#15尾崎を欠く日本無線はスタートに#7篠原を起用した。大倉三幸は#4近森がスタートに復帰し、バランスのいい布陣となった。

 第1ピリオドは交互に点を取り合う展開となり、残り3分ごろまで10−10と同点のままとなる。しかしそこから大倉三幸が途中からコートに入った#7木村実のオフェンスリバウンドや速攻で連続得点し、16−10と大倉三幸がリードする。しかし第2ピリオド序盤から日本無線#7篠原の1on1からの得点で一気に追いつかれ、16−16と同点にされる。その後どちらも一歩も譲らない展開となるが、残り2分をきって大倉三幸はトランジションから#6木村行がミドルシュートを決め23−21とリードすると、日本無線の攻撃をしのぎ、#4近森のスチールからの速攻につなげリードをひろげる。最後は日本無線#10箱崎にフリースローから得点されるが、25−22と大倉三幸がわずかにリードして前半を終える。

大倉三幸#7木村実

 第3ピリオド序盤は日本無線に速い展開で攻められ、残り7分半には日本無線#18鈴木に3ポイントシュートを決められ28−29と逆転される。しかし大倉三幸#5有田のドライブや#16山本のカットインで日本無線のディフェンスが収縮してきた隙を突き、大倉三幸#15遠藤や#6木村行がミドルシュートを決め、大倉三幸がリードをひろげ、45−38で第3ピリオドを終える。第4ピリオド序盤、大倉三幸は#10奥が3ポイントシュート、続けてミドルシュートと外目に攻めて得点し、リードをひろげる。しかし厳しくなった日本無線のディフェンスにオフェンスの流れが悪くなった大倉三幸はその後得点が伸びなくなる。その間に日本無線に中外を上手く使って攻められ一気に追い上げられると、残り1分8秒日本無線#7篠原のポストからの合わせのプレーで#10箱崎にゴール下を決められ、55−56と逆転される。ここで強気に攻め込んだ大倉三幸#5有田がファールをもらい、フリースローを落ち着いて決めると、その後の日本無線のオフェンスを守りきり、日本無線にファールゲームをさせる。残り13.7秒に大倉三幸#15遠藤が#5有田からのパスをゴール下で受け得点すると、次の日本無線のシュートを食い止め、61−56で大倉三幸が勝利し、3連勝となった。


<ピックアップ・ゲーム・2>
TEAM
 



 
TEAM
66
18
1st
17
78
曙ブレーキ工業
16
2nd
23
三井住友海上
(4位)
17
3rd
14
(7位)
15
4th
24


第2・第4ピリオドを制した三井住友海上が 曙ブレーキ工業を振り切りリーグ戦初勝利をあげる

スターティングメンバー
曙ブレーキ工業:#7石井、#8浅田、#10市元、#12石田、#14平山
三井住友海上:#7柏木、#10村井、#11田邊、#13東浦、#20辻内

 第1ピリオド中盤までは三井住友海上#20辻内のドライブからのパスワークから#13東浦や#7柏木が得点を重ね、15−8と三井住友海上がリードする。しかし残り3分半ごろから曙ブレーキ工業のボールの回りがよくなり、三井住友海上はファールが増える。残り3分三井住友海上#20辻内がオフェンスファールを取られると、流れは曙ブレーキ工業に傾く。オフェンスのリズムが崩れた三井住友海上は3分近くノーゴールが続き、その間に曙ブレーキ工業#8浅田や#11白川のシュートが決まり、残り19秒には15−18と逆転される。しかし三井住友海上最後のオフェンスを果敢に攻め、#7柏木のゴール下が決まり、流れよく第2ピリオドにつなげる。
第2ピリオド開始早々三井住友海上#20辻内の3ポイントシュートが決まり20−18と逆転するが、そこからしばらくはシーソーゲームとなる。その流れをこの日シュートがよく決まっていた三井住友海上#20辻内の3ポイントシュートで断ち切ると、三井住友海上が一気に得点を重ね、40−34とリードして前半を終える。

三井住友海上#13東浦

 後半どちらも攻め気を出していくもファールが増えてくる。曙ブレーキ工業に#10市元のポストプレーやトランジションからの#9前山の3ポイントシュートなどで追い上げられ、残り1分41秒には51−51と同点となる。その後強気で攻める両チームだが、残り30秒をきって三井住友海上#20辻内、曙ブレーキ工業#11白川と続けてオフェンスファールとなる。しかし最後は残り1.8秒に三井住友海上#20辻内がドライブでファールを取り、そのフリースローを決めて、54−51となんとかリードを保つ。
第4ピリオド開始3分までは交互に点を取り合う展開だったが、残り7分8秒に曙ブレーキ工業#10市元を個人ファール5個目となるオフェンスファールでベンチに下げさせると、流れは一気に三井住友海上に。その後三井住友海上も#11田邊が5ファールでベンチに下がるも、強気のオフェンスを展開し、曙ブレーキ工業のファールを誘う。フリースローなどで確実に加点した三井住友海上が78−66で曙ブレーキ工業に勝利した。

横河電機本社(1位) 86 − 63 三井住友銀行(6位)

勢いに乗った横河電機本社が力の差を見せつけ 3連勝を飾る
  第1ピリオド中盤三井住友銀行#8に高確率で得点されリードを許すが、横河電機本社#15小納が積極的に攻め始めると一気に追いつき、逆転する。第2ピリオドから横河電機本社はいろいろと選手を入替え、新人やベンチプレーヤーをコートにあげる。しかし横河電機本社の勢いは変わらず、そのまま横河電機本社が勝利し、負けなしの3連勝となった。


写真:#15小納(横河電機本社・左)と#15黒木(三井住友銀行・右)

東京日産(3位) 96 − 106 東京電力(8位)

第4ピリオド終盤から勢いに乗った東京電力が 延長に入っても止まらず 東京日産を破り1勝をあげる

→11日分のその他の写真:coming soon

<<ザ・ゲーム>>〜逆転編・1〜

『勢い』−東京電力(昨年8位)

 老練な印象が強い関東実業団1部リーグのチームの中で異彩を放つのが東京電力だった。関東の強豪大学出身の選手も名を連ねる他のチームに比べ、東京電力のほとんどの選手が高卒で実業団に入っている。技術やフィジカル面では劣勢となることも多いが、そんなチームだからこそ他のどのチームにもない「勢い」を持っていた。約20点離された第4ピリオド終盤からの追い上げ、同点、そして延長…彼らの「勢い」はチームに貴重なリーグ戦の勝利を呼び込んだ。


 点差がついたゲーム終盤、コート上で東京電力の選手たちが声を上げる。「最後まで頑張れ!」「声出てないぞ!」と。チームメイトに向けてというよりも、自らを鼓舞するように声を掛け合いながら、劣勢の中にも選手たちの集中は高まる。

 対する東京日産は点差が離れたことで逆に集中が途切れ始める。さらにPG#10上原が怪我でコートを離れる。それでもまだ東京日産の優勢は変わっていなかった。

東京電力#8涌井

 ここから東京電力は激しいディフェンスと展開の速いオフェンスで徐々にゲームを支配し始める。そして残り2分18秒、東京電力#6荒井の3ポイントシュートが決まり、82−83と1点差に詰めた。しかし確実に決めてくる東京日産の得点を抑えることができずなかなか追いつけない。残り30.4秒、3ポイントシュートでチームの勢いをつけていた東京電力#6荒井がファールアウトする。87−90の3点差の場面だった。

 次のオフェンスで東京電力#8涌井が1on1からディフェンスを振り切り3ポイントシュートを放つ。そのシュートはきれいな弧を描くとゴールに吸い込まれた。試合残り23.8秒だった。

 東京日産には十分1プレーの時間があったが、ここで強く攻め込むことができなかった。ゲームは東京電力の流れになっていた。

 そのまま東京電力の勢いは止まらず、延長戦を制しうれしい1勝を上げた。

<<ザ・チーム>>〜紹介編・2〜

『勝つことへのこだわり』横河電機本社 

昨年の成績:リーグ戦優勝・全日本競技大会準優勝・東京都選手権4位・関東選手権準優勝・地域選抜大会優勝・全日本選手権3位

昨年創部57年目でリーグ戦初優勝、その他の大会でも常に上位に入り、全国レベルのチームとなった。チームバランスのよさと勝利への意欲はどのチームよりも強い。


 「3年前に小納が入って変わりましたね。」と奥山監督。今や全国レベルとなった横河電機本社も2部リーグから上がれない時代が長く、1部に上がってもなかなか成績が残せなかった。そんなチームが変わったのが3年前の小納真良の加入だった。その翌年には双子の兄の真樹も加わり、チーム力は一気に上昇する。

 現在のスタートメンバーは、ゲームを支配するPG#15小納(真良)、3ポイントシュートと堅実なディフェンスの#4佐藤、長身からの3ポイントシュートが武器の#10阿部、抜群のバランス能力と得点力を持つ#20田ヶ谷、インサイドで安定感と存在感の出てきた#11飯島の5人。

  ベンチメンバーは安定したゲームメイクの#14植村、スマートなオフェンスを見せる#9瀧川、2mの長身を生かしたプレーが期待される#13森、フィジカルが強い#7葉など。また新人の#8笹(秋田経法大)も即戦力として期待される。その他の新人は安定したプレーの#17熊谷(中央大)、1on1が強い#18小西(法政大)、切れのいいシュートを放つ#19吉川(大曲工業高)がいる。

  昨年小納兄弟とともに横河電機本社の躍進を支えたのが新人(今年2年目)の#20田ヶ谷だった。「ベテランと新人がバランスよく機能したことが昨年の好成績につながった(奥山監督)」ことから、今年も早くスタートメンバーを脅かし、そこに名を連ねる新人の台頭に期待している。

 また現在小納真樹が故障でプレーができず、その分も真良に多くの負担がかかっている。その#15小納真良のいない時間帯をどうつなぐか。それが今の横河電機本社のもっとも大きな課題だ。「個々が意識を持ってやっていかなくてはいけない」と奥山監督は言う。

  小納・田ヶ谷といったオフェンス力のある選手が目立つことでとかく“派手な”印象のある横河電機本社だが、「派手なところだけで勝てません。勝つために守ります。」とチームキャプテンの佐藤(#4)。「泥臭く、全員でルーズボールを追い、ディフェンスをして、リバウンドを取る。それがうちのチームです。」と言い切る。

  目標は「全て勝つこと。」勝利への貪欲さがそのまま強さにつながっている。

チームキャプテンが語る『実業団バスケの魅力』

“自分たちでつくるチーム”横河電機本社 # 4佐藤 岳

「やっている方としては長くチームにいて自分たちでチームを作り上げる面白さがあります。仕事も一緒だったりして、みんなで一緒にやっているという感じが強いです。見ているほうからの魅力は選手が近いことですかね。自分たちのゲームを見て、「もっと自分たちも頑張れば勝てる!」というような気持ちになってもらえると思います。後は選手やチームだけでなく会社全体の協力や応援はうれしいですね。」

<<ザ・プレーヤー>>〜中堅編・1〜

『静かな熱さ』−有田一哉・大倉三幸#5・日本大出身・F・4年目

 勝敗を決めるフリースローを2本とも決め、チームの勝利を引き寄せたその人は、試合後チームの輪を見下ろす一番外側のベンチに静かに腰掛けていた。

 「とにかく攻め気で前に向かっていくこと、それだけでした。」残り1分に逆転された直後の攻撃で1on1からゴール下に身体をねじ込みファールをもらう。「自分が行かなくてはという気持ちはありました。フリースローは決める自信がありましたから、とくにプレッシャーはなかったです。」そして彼はきっちりと2本ともフリースローを決めた。

「今日はみんなが攻め気を持って戦いました。みんなが頑張っていたので勝てました。」

  昨年の好成績、そしてこの日昨年準優勝の日本無線を接戦で破る。「自分たちのやるべきことをちゃんとやれば勝てる自信はあります。」と言いながらも、「決して驕ることはないです。自分たちは常にチャレンジャーですから。」

  「コート上もベンチもあわせてチームみんなの力で勝つことがうちのチーム」だと静かに強く言い切る。


有田一哉選手のインタビューはこちら 

<取材・文 渡辺美香>

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