<第26回男子ジョーンズカップ>
 台湾において26回目のジョーンズカップが行われた。この大会は以前は台北市内の2万人以上収容の体育館で行われていたが、その体育館が火事で焼失し、その後は会場を転々としている。主には今回の台北市立体育学院体育館だが、それ以外の場所も使うこともあった。
 日本は過去の大会では何度もナショナルチームで参加している。ちなみに、今回のU-24日本代表チームのHCである池内氏は現役時代、何度かこの大会に出場していた。
 
 台湾の人気スポーツは野球とバスケットボール。シーズン中はほとんどの試合がTV放送され、観客も8割方は埋まる。NBAの人気も高く、台湾のESPNを中心に放送も盛んだ。この度の大会中も、NBAのチームジャージを着た観客を多く見た。それだけバスケットボールが文化や生活に根付いているのだろう。観客の多くはゲーム観戦中、ただ見ているのではなく、好プレーには大きな声援、悪いプレーや良くないジャッジにはブーイングと、ゲームそのものに参加しているように観戦する。そこにはなんともいえない会場の一体感があった。

 この大会は親善大会的位置付けのため、参加チームはそれぞれに様々であった。男子参加チームの内、ナショナルチームで参加したのは、カタール・フィリピン、台湾ホワイトチームもほぼナショナルチームと言っていいだろう。ナショナルチーム以外の選抜チームが、韓国(学生選抜)・日本(U-24・学生選抜)、台湾ブルーが台湾リーグからの選抜チームだった。オーストラリアはここ数年、トップリーグからチームを派遣している。カナダは大学のチーム。ドイツはU-18のバスケットボール・アカデミーからチームを派遣していた。そのため、年齢・スキル・チームとしてのまとまりなど、非常に多彩であり、それだけに大会期間中にチームによっての変化が見られるなど、大変興味深いものがあった。

 男子の大会は9チームの総当りで、1日4試合、9日間、全36試合が行われた。そのうち第3・4試合は全てTV放送された(そのほとんどが台湾ホワイト・ブルーの試合だったが、それ以外の試合もあった)。そのためもあってか、第3・4試合はほとんど満席、熱狂の中でのゲームとなっていた。ハーフタイムには観客参加のイベントもあり、大会後半には選手やチームスタッフらもそれらに参加し、大会を盛り上げていた(日本チームからもトレーナーの小出氏が最終日の最終戦のハーフタイムイベントに参加、盛り上げに一役買っていた)。


開会式

選手宣誓

イベントに参加する小出氏

ボディーペイントで盛り上げる観客

<レポート>

大会初日(7月24日)
 この日は第3試合と第4試合の間で開会式が行われた。台北市長なども参加し、観客の盛り上がりもすごかった。選手宣誓は現在台湾で人気NO.1の田罍(台湾ホワイト#7)が行い、館内は黄色い声援で包まれた。
 日本チームの初戦はその直後の第4試合で、相手は台湾ブルー。日本では決して経験できないような熱狂的な歓声の中でのプレーとなった。しかし、その状況が逆に選手たちの集中力を維持できていたように見えた。圧倒的な台湾ブルーチームの応援の中、試合が進むに従い少しずつ日本チームの好プレーに拍手や声援がとぶようになった。
 試合終了後、ホテルに帰る日本選手たちにサインや写真を申し出るファンが多く、選手たちはなかなかホテルまでたどり着けなかった。

大会2日目(7月25日)
 日本は第2試合。フィリピンのナショナルチームと対戦。フィリピンは個々の能力はあるが、チームとしての機能や、シュート力に難があるように見えた。タイプ的には日本に似たチームのように思えた。

大会3日目(7月26日)
 日本は第1試合、オーストラリアとの対戦だった。大会も3日目となり、各国代表にも徐々に応援が増えていっていた。日本もオーストラリアもこの大会では人気チームであったが、この頃からすでに「ファンの応援」が始まっていた。試合中には「ニッポン!」コールもおこった。
 第3試合、台湾ホワイトチームはカタールのナショナルチームと対戦。カタールは前日オーストラリアに大敗していたが、その時はチームとして機能しておらず、個々の身体能力のみといった印象だった。しかしこの試合は、敗れはしたものの、その身体能力を活かして、上手くゲーム展開ができていた。
 また、この日は台湾チームの1つ、台湾ブルーが初の敗戦をした。相手はカナダ。カナダは初日韓国に1点差、前日(25日)には台湾ホワイトチームに接戦の末敗れており、この試合がこの大会初勝利となったが、この後調子を上げ、最終戦まで好調をキープする出発点となったゲームでもあった。


初日最終戦・台湾ブルーvs日本代表


2 日目第2試合・日本代表vsフィリピン代表

大会4日目(7月27日)
 日本は第1試合で韓国と対戦。1点を争う接戦を落とした。1点を追う最後の1分近く、ボールを奪取出来ず、タイムアップとなった。試合後台湾のメディアが「なぜあそこで日本はボールを取れなかったのか?」との質問を日本選手にしていた。
 この日の最終戦はこれまで全勝同士の台湾ホワイトとオーストラリア。だれもが好ゲームを期待するこの試合は、立ち見が出るほどの盛況となった。試合は前半オーストラリアがリードしたが、観衆の声援を背に、後半から勢いに乗った台湾ホワイトが、エースの#13陳信安・#7田罍らの活躍で勝利した。試合後オーストラリアの選手から声をかけ、一緒に中央で円陣を組んでいた(オーストラリアチームはほとんどの試合でこれを行っていた。彼らは試合のみでなく、いろいろな意味で、この大会を楽しんでいるようだった)。

大会8日目(7月31日)
 日本は第1試合でドイツと対戦。U-18チームであるドイツはどの国の選手に比べても、フィジカル・スキルともにレベルが低かったが、この大会の中で少しずつ成長している様子も見られていた。
 この日の最終戦は台湾チーム同士の対戦。会場前にはダフ屋が出るほどの人気カードとなった。チーム的にはほぼナショナルチームで構成されているホワイトチームの圧勝だったが、館内はどちらのチームにも大きな声援が送られ、最後まで熱狂の中でのゲームとなった。


3日目最終戦・オーストラリアvs台湾ホワイト


8日目最終戦・台湾ブルーvs台湾ホワイト

大会最終日(8月1日)
 最終日となるこの日、順位を決める直接対決となるカードがあり、最後まで盛り上がりのある大会となった。
 まず第1試合、カナダ対オーストラリア。この対戦は2位決定戦となった。接戦の末カナダが勝利し、2位を決める。
 そして、第4試合、台湾ブルー対韓国。この対戦は4位決定戦となる。この試合圧倒的な台湾ブルーチーム応援の中、韓国チームは集中を維持し、終始リードをまもる。第4ピリオドには厳しいディフェンスで台湾ブルーの得点を6点に抑え、韓国が勝利し、4位となる。
 日本は第3試合、ここまで全勝ですでに優勝を決めている台湾ホワイトと対戦。台湾のスタープレーヤー揃いの台湾ホワイトへの声援は予想通りだったが、初戦の台湾ブルー戦と違ったのは、日本の応援団といえるグループがいくつかあった事だろう。日本の旗を掲げ、「ニッポン!」コールを送ってくれた。
 閉会式では、個人賞・優秀選手賞・銅・銀・金メダルの順で表彰が行われた。この日オーストラリアとの接戦をものにし、2位となったカナダチームの中心選手である#23がポイント&3ポイント王のダブル受賞。優秀選手5名には1位の台湾ホワイトから2名(#7・#13)、2位のカナダからは先のポイント王となった#23、3位のオーストラリアからはゴール下で圧倒的なパワーを見せた#14(日本戦では何故か#15をつけていたが)、そして4位韓国からは選ばれず、5位の台湾ブルーから#13が選ばれた。そして、MVPには台湾ホワイトの#13陳信安が選出される。チームの勝利を呼び込む流れをつくった、オールラウンドな働きを評価された。
 閉会式後は、あちらこちらで記念写真の撮影会となっていた。


日本の応援をする台湾の観客


優秀選手5名・左から台湾ホワイト#13(MVP)・オーストラリア#15・台湾ブルー#13・カナダ#23(得点&3P王)・台湾ホワイト#7

<ジョーンズカップを終えて>
 この度はU-24(学生選抜)が代表として参加したが、彼らの中の何人かは初めての国際大会だった。皆いい経験ができたことを、まず感想として述べる。そして、多くの試合数をこなす事で、プレー面だけでなく、コンディションや精神的な部分まで考える事ができたようだ。
 親善大会とはいえ、7〜8カ国からチームが集まり、集中した期間に8試合前後のゲームを行うこの大会、それほど多くはない「国際経験」を積む機会として、大変意義のある大会のように感じた。

<取材・文 渡辺美香>
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