<第34回日本車椅子バスケットボール選手権大会> 決勝レポ・勝ちあがり表はこちら

<ピックアップ!>
ピックアップ!:宮城MAX

 1998年以来、春の選手権決勝に駒を進めたのはワールドBBC(東海北陸)、千葉ホークス(関東)、そして明和BBC(近畿)のわずか3チームのみ。この3強を崩す1番手と言えるのが東北の宮城MAXだ。アテネパラリンピック代表の藤井新悟・藤本怜央を始めとして個々の能力が上がり、チームとしても攻守両面でかみ合いを見せて選手権ではベスト4、秋の国体では準優勝と力を付けてきていた。
 
 だが、結果は準決勝でワールドに敗れ、3位決定戦に回ることになった。
 チーム最年長の#9椎名光男選手は「目標は優勝でしたが、本当のところは3位と。まぁ仕方ないかなぁと思います。来年につながる3位でしたから」。ワールド、明和と同じブロックに入ったことも「うちは苦しいほうがいいんですよ」。
 理由は「若いチームだから」。30代の選手が多く活躍する中で、MA
Xのスタート5人の平均は26歳だ。
  準決勝、岩佐義明HCは点差が開いていてもラインギリギリのところに立って指示を出し続けた。タイムアウト時には「次につながるように頑張ってしっかりやれ!」と鼓舞した。
 結局追い上げはならなかったが、続く3位決定戦で気持ちを切らさずプレー、勝って終わる事が出来た。

準決勝、ワールド戦のタイムアウトにて

大きく明るい声が飛ぶ
 結果には残らないけれど、MAXの良さは今大会も際立っていた。岩佐HCの体全体を使った指揮しかり。どんな時でも選手がいいプレーをしたら「ナイッシュー!」「ナイスディフェンス!」と女性スタッフから元気な声が飛ぶ。表彰式で東海林和幸選手がベスト5に選出されると、「おーっ!!」と自分の事の様に喜ぶチームメートの喝采が起こった。

 MAXのモットーは“全員バスケ”だという。選手だけでなくスタッフも、コート内だけでなくコートの外でも。スタートセンターの萩原哲也の欠場など万全のチーム体勢とは言えなかったが、#12中澤正人ら若い選手が成長し、#10向後寄夫を始め交代して出た選手が持ち味を発揮した。
  あとはチャンピオンフラッグを持って帰るだけのところまで来た。次は秋の国体。彼らの戦いは続く。

#4東海林和幸キャプテン(持ち点1.5/G)
華やかではないが存在感のある、チームを支える司令塔。
「去年ベスト4だったので最低ベスト4になろう、頑張って決勝に残れるようにと臨みました。1日目は三重(チャリオッツ)と埼玉(ライオンズ)で、最初の入り方はどうしても苦しんだりしていましたが、後半離せたのはだいぶチームとして力がついてきたんじゃないかなと思います。ワールド戦(準決勝)は、第1クォーターで一気に離されてしまった(6-23)けれど、そのクォーターほどの力の差はなかったと思います。ただやっぱり全体的に力の差は感じました。今のままでは追いつけない何かがあると感じましたね。

(最後の3位決定戦はディフェンスなど持ち味を出せたのでは)そうですね、すごいシューター(長野#14奥原)がいるのでディフェンスは大変でしたが、何とか修正できて止められてよかったです。

(秋の国体に向けて)こっちも2年連続2位なんですよね(苦笑)。確実に優勝目指して頑張ります!」

 圧巻だったバックコートからのディフェンス
#8佐藤正哲選手(持ち点2.0/G)
キャラクターでチームを和ませ、6マンとして流れをつないだ縁の下の力持ち。
「結果は3位入賞と良い成績でしたが、個人的には全然自分のプレーが出せなくて、悔いの残る大会でした。今日(最終日)は皆頑張って、個人個人の役割を果たしたプレーができて、全員で勝てた試合だったかなと思います。でも個人的には…(笑)。来年は優勝します。俺の活躍で!」
#11藤井新悟選手(持ち点1.5/G)
パスを出す時、受ける時。楽しそうな笑顔でプレーした。
「最初の試合から強く気の抜けない相手でも、いい感じで出来たのですが、準決勝のワールドは1枚どころではなく2枚も3枚もうわてでした。これからやらなければならないことはまだまだ多いと感じましたね。まぁ優勝は来年と決めているんです(笑)、まだ若いので。来年は行きますよ。

(パスを出す時笑顔なのは)あー、あれはチームメートがいいとこに入ったな、やるなって感じで笑顔で出してるんです。

(若いチームということですが、これから何を積み上げていきますか)センターに若い選手がいて、まだ入って1年経っていないんですよ。そいつを鍛えるのと、俺達もともといるメンバーは1つ1つ細かいところをしっかりやる。基礎からですね。、うちは“全員バスケ”を合言葉にやっているのですが、選手層を厚くして、それをさらにレベルの高いものにしていきたいです。」
#16藤本怜央選手(持ち点4.5/C)
強気でパワフル、3決では52点を叩き出したインサイドの大黒柱。
「まだ終わったばっかなので、何が足りないかはちょっとわかりません。でも圧倒的に決勝に出るチームと違いますね。入りだしの気持ちが慣れていない。強いところとやる経験がまだ足りないとすごく感じました。

(気持ちがどのように違うのですが?)試合は10分が4回ありますよね。僕らはその全体で戦おうとするんですけど、慣れている選手は最初の10分で決めようとしてくるんですよ。こう、圧倒的な圧力を感じたし、逆に自分達にはそれが全くなかったと思います。遠征は少なくんないんですけど、その1試合1試合を大事にやれていない、だから本番で出ない。やっているのに慣れていないのが感じられました。

(準決勝、ワールド#15大島朋彦選手とのマッチアップは)味方で、お互い日本人で良かったなって感じですね(笑)。頼もしいです。JAPANで一緒にやっているので2つの気持ちがありますね。僕も向こうのことを知っているし、向こうも知り尽くしていてやりにくい、でもやっていて楽しいです。
とにかくあそこに勝たないとここ(決勝)に立ったところで話にならないし、日本一にもなれないんだなって思います。」
試合中、時折見える選手の手のひらはこの通り真っ黒。この手でマシンを動かし、かつボールを操る。転倒して起き上がるときも、チームメートとハイタッチを交わすときも、この手を使う。
藤本選手の手には赤く皮のむけたマメがいくつもあった。
「いつもはこんなにマメできないんですけど今回は多くて。テーピングもいつもはこんなにしてないんですよ!何か素人みたいでいやなんですけど(笑)、ちょっと痛いのにはかえられないので。」
もちろん、栄光を掴むのもこの手なのだ。
ピックアップ!:NO EXCUSE

 優勝した千葉ホークスを初戦で苦しめたのがこのNO EXC
USE。前半は17-33とダブルスコアとなるが、3Qに猛チャージ。一気に3点差まで詰め寄る。

前日の1回戦突破後、「このスポーツは練習にしても何にしても1人ではできないもの。うちは能力のあるチームというわけではないけれど、強い相手でもチームで戦えれば試合になる」と力強く言った東野智弥HCの言葉をまさに選手が体現した。

東野ヘッドコーチの指示に耳を傾ける
惜しくも4Qに突き放され金星はならなかったが、NO EXC
USEの戦いぶりは大会のハイライトの1つになった。


左は手書きの応援フラッグ

常に声を出す#4佐藤

チームの中心#12菅澤

ピックアップ!:高知クラブ

 5月2日18時40分。4試合だけ行なわれた1回戦の1つ、高知クラブ-三重チャリオッツは接戦となった。
 前半は23-25と全くの互角。しかし第3Q、三重チャリオッツがバックコートからプレスディフェンスをしかけると高知クラブの得点が止まり、35-23と2桁差に。4Qは逆に高知クラブが前から当たり、じりじりと追い上げていく。

  それでもなかなか追い付けない高知クラブだったが、焦りの色は見えない。代わりに笑顔が見えた。
  ナイスプレー、惜しいプレーがあった時。タイムアウトが終わった時には、1番遠いチームメートのところまで行ってタッチを交わしてからコートに戻っていった。

クレバーな司令塔#10片岡

ポイントゲッターの#8永島
 2点及ばず敗れても、クールダウン、反省時もやはり笑顔が見える。仲間同士1人ずつタッチを交わしていた。負けただけなら泣いて悔しがる。きっとそれ以外のものを手に入れたのだ。


どんな時でも笑顔があった

<エキシビションゲーム>

試合前には表彰があった
 ポラリスとはラテン語で“北極星”。ほとんど位置が変わらないことから、航海などの指標となってきた星だ。日本代表を支えてきたOB
(現役を含む)選手や長く関わってきたスタッフで構成されるこの会は、車椅子バスケットボール連盟や選手に対して道しるべとなる存在でなければならないということでこの名がついた。
 
  ジュニア代表はアジア予選を勝ち抜き、今年8月にイギリス・バーミンガムで行なわれる世界ジュニア選手権の切符を手にした。「目標はでっかくメダルを獲りたい!」(藤本怜央キャプテン)。16〜21歳、女子2人を含むフレッシュな顔ぶれでポラリスの会の胸を借りた。
ポラリスの会
ジュニア日本代表


TEAM
 



 
TEAM
ポラリスの会
24
18
1st
6
22
ジュニア日本代表
6
2nd
16

スターティングメンバー
ポラリス:#5岡田、#11萬崎、#12伊藤、#13、#15土屋
ジュニア:#4川崎、#9藤沢、#11渡辺、#14中谷、#15
宮島

前半はポラリスの会が前から当たるディフェンスを見せ、攻めても確実なミドルシュートに#11萬崎の華麗なバックビハインドパスと全開、うまさを見せ付ける。

ジュニアは3決・決勝を控えていたキャプテンの#13藤本(宮城MAX)・#12香西(千葉ホークス)はアップのため欠場したが、#15宮島がゴール下で存在感を発揮。#10網本・#14中谷のミドル・リバウンドで追い上げるも1歩及ばなかった。だが声を掛け合い、終始積極的にプレーしていた。


ジュニア#10網本

ジュニア#15宮島

ポラリス#10原

ポラリス#11萬崎

<フォトギャラリー>

NO EXCUSE-Risky熊本
DFが惜しくもファールになりこの表情

宮城MAX-長野WBC
長野#14奥原の体全体を使った3P

明和BBCvsワールドBBC
明和のキーマン#9是友(最右)封じ







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サブアリーナでは体験会


過去の大会のちらしが一堂に


歴史を紹介するパネル


コート裏では入念にマシンの調整

<取材・文 北村美夏>