言えなかったひとこと〜大山復活〜 2004.5.15
チャイニーズタイペイ
(世界ランク25位)
<6敗>
27-25
11-25
19-25
22-25
日本
(世界ランク7位)
<6勝>
1-3


「(チャイニーズタイペイは)ディフェンスのしっかりしたチームでした。10年前の日本のバレーに苦戦したという感じです。でもあぁいう風なのは世界では通用しないんですよ。日本はそこからスタイルを変えたんです」
「思わぬ苦戦でしたが、大山があのパワフルさで“そういう時代じゃないんだ”と教えたと思いますね」

柳本監督が淡々と語る。監督はいつもそんな調子で確信を持ったコメントをするけれど、今日は少しびっくりした。攻撃的に感じたからだ。 それほどに大山の復活を待っていたのだろう。

「大山はあれだけパワーのあるスパイクを打ちますからね。コートに長く置いておけばそれだけ戦力になりますよね」

今日の大山は今までに登場した2戦とは違った。
ひきつった笑顔はなかった。スパイクミスの後、相手サーブが打たれるまでどこを見るでなく目線がフワフワすることもなかった。ゲーム中大山と話をする選手の表情も硬くない。

タイムアウトが明ける寸前、監督がサイドラインに並ぶ大山に“思い切り打て”とスパイクの素振りをして見せる。背中をポンとたたく。

足を動かしながら言われたように何度もその素振りを繰り返す。 今日の大山は攻めていた。大きな声でトスを呼ぶ。ラリー中に指示の声も出す。 離れた2段トスもしっかりと打ち切った。
調子が上がってきたのはスパイクだけではなかった。あまり得意でないレシーブも積極的に跳び込んでつないだ。

「大会に入る前より意識が変わりましたね。はじいたレシーブも諦めなくなりました。今日の(フロアギリギリまではじかれたボールをつないだ球)は東京に入る前(大会直前)までは見逃してたボールですよ。ここへきてやっとですね」
「意欲を持てばできるんです。自信を持って欲しいですね」

監督は最後まで淡々と語った。

“自信を持って欲しい”

大山が出場したナイジェリア戦後の会場インタビューでは“大山は健在ですよ、ご心配なく”とコメントしていた監督。
なかなか言えなかったひとことを出せるところまで大山は上がってきている。

「明日のロシア戦はブロックが高いので、はじき飛ばしたり強気で攻めていきたいです」

明日は今日よりも大きな笑顔が見られるはずだ。

 

S-move編集部 田中美穂
  東京都出身 21歳。日本大学4年。小中高時代はバレーボール選手として青春を過ごす。 培った大きな声は時に編集部内で鬱陶しがられることがある。 感動を与えてくれる、人・競技・ドラマすべてに感謝の気持ちを込めて書いていきます。

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