「何か」を探す 2004.5.26

3試合連続のフルセット負け。日本のリズムは明らかに悪くなっている。
何がいけないのか。今日何が起こっていたのか。

試合の序盤から日本選手の動きにキレがない。スパイクもレシーブの出足もやっぱり勢いがない。リードされる展開。確かにイランは弱いチームではなかった。 去年のアジア選手権で日本はストレートで敗れている。

「イランの強さは分かっていました。選手たちはジュニアの頃から一緒に組んでいるし、チームとしては円熟期に入っていると思います」(田中監督)

・イランも強い
それ以外の「何か」がいくつあったのか。

出足が悪いことに関してはキャプテン小林からはこんなコメントもあった。
「立ち上がりはどこも悪いですよね。試合前のショーなんかがあって、アップしてから入るまで時間があるんですよね。どこのチームも条件は一緒ですからいい訳にはならないですけど、前半の硬さはそういう部分もある、とは思います」
条件は一緒、と何度も繰り返したがそれもひとつ。
(日本戦は他国にもその傾向は見られる)

・精神的なこと
「(今日の試合を迎えるのに)やっぱりフルセットで2連敗っていうのはしんどいですね。3-0と3-2で負けるのって全然違うんですよ。落ち込みますし。そういうのを引きずらないようにミーティングとかするんですけど」
「フルセットの5セット目って気持ちで走った方の勝ちだと思うんですよ。そこで走れないっていうのはそういう落ち込んだ気持ちもありますよね。僕もコートに入った時はムードメーカー的な役割を果たそうと声を出したりするんですけど、(スタメンでは)いま若い山村がそうしようとして、チームが劣勢に立たされると浮いてしまうこともあるし、チームが噛み合ってないような空気はありますよね」(小林)

・疲れ
動きにキレがない。サーブも勢いは落ちている、というよりもボールに正確な勢いが加わっていない。しっかりドライブがかかった強い打球でなくて、コートに刺さっていかないサーブ。
スパイクも足が長い。また今日はワンタッチをとりに行くスパイクをアウトにすることが多く、フェイントも多用したがトスは上がっているのにどこか苦しまぎれだった。

「確かに疲れているようには見えます。みんな疲れているとは思うけど、それはどこのチームも一緒なんです」(小林)

・山本に頼りすぎなのか?
「疲れているとは思いますけど、それを理由にしたら彼は成長しないし、価値を落とすことになりますよね。いま体力がないと言っても、4年間いくらでも(準備をしてくる)時間があったわけですから。だいぶ精神的にも、技術的にも大きくなったなと思いますけど、疲れていても苦しいときに決められるのがエースですし」
日本のバレーはサイドアウトを取って山本で決めるというスタイル。彼に頼る部分は大きい。それだけ彼の負担・疲労も多い。
山本に頼れなくなった時に他の選手がどれだけ頑張るかということももちろんあるが、山本の調子次第で宇佐美のトス回し、他のアタッカーの調子も上向いてくるはずだ。
いまはコートでチームを引っ張れる人間がいない。

・チーム作り
イラン・パク監督は、試合後の会見でこう語った。
「アジアのチームはアタック・サーブ・ブロックを(それぞれ)強化しなければならないと思います。1セットに5本レシーブするには毎日2時間くらいレシーブ練習をしなければならないと思いますが、ナショナルチームではそれだけの時間をとるのは不可能ですね」

時間が取れない。どの国もそこで悩んでいる。調整不足で強豪国が星を落とすこともある。アジアのチームは特にスパイクとフィジカルの強さを追求しなければならないという。

「私はナショナルチームを預かったのは大会の20日前なのですが、その前から各クラブのトレーナーに、体力的に整えておくように言っていました。チームが集合した段階で90%は準備できていたんです。私は残りの10%を与えただけで」

Vリーグのチームでそれがどれだけできていたか。
また体力的なことは置いておいても、国内と世界との差も意識しなくてはならない。例えばブロックでは、
「僕みたいな小さい選手は見切り、っていうかどこか捨てないと行けないんですよ。でも大きい選手とかはリードブロック(※)一本で対応できちゃうんですよね。国内で通用するものが世界では通じないんです。日本も日本なりのブロックの構築が必要ですよね」(小林)

・大会の中で生まれた課題
「このチームは潜在能力は抜群だと思っています。W杯後、マルコスや甲斐が入ったんですが、ずっと練習してきましたけどゲームの中での経験が出るのかなという風にも思います」(田中監督)

「今は何が悪かったか、考えられない状態ですけど……コンビミスは僕の責任だと思います」(宇佐美)

「昨日に引き続き調子が悪くって、今日の試合も僕のせいで負けたと思っています」、
「何でこうなっているのか自分ではまだ迷っている状態です……」(山本)
精神状態じゃないことは分かっているけれど、という山本の表情はやっぱり沈んでいる。

日本はいま、「何か」を模索している。

※リードブロックとは
トスが上がったこと(または相手の動き)を見てから跳ぶブロックのこと。
あらかじめ予想して先に跳ぶブロックはコミットブロックという。


S-move編集部 田中美穂
  東京都出身 21歳。日本大学4年。小中高時代はバレーボール選手として青春を過ごす。 培った大きな声は時に編集部内で鬱陶しがられることがある。 感動を与えてくれる、人・競技・ドラマすべてに感謝の気持ちを込めて書いていきます。

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