<デフ男子日本代表>
〈終〉『熱血おとうさん。』

林 彩根
ヘッドコーチ

時に優しく、時に厳しく。父親のようにチームを支えるのが林監督だ。自身は健常者で、手話はろうバスケに関わりながら並行して勉強したという。今でも選手に「ちょっと違うよ」と直されることもあるが、間違いをこれっぽっちもおそれずどんどんコミュニケーションを取っていく。

「手話はちょっと違うけど言いたいことはわかる―」選手にそう言わせてしまう林監督はまさに適役だ。
ちなみに話す時は「ほな」「おおきにぃ」とコテコテの関西弁。その明るさもチームにとって重要なアクセントとなっている。

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このチームの指揮を取り始めたときのことを教えてください。
「3年前です。メンバーのうまくなりたい、知りたいというバスケットに対する欲求、そこにひかれました。それまではフリッパーズという健常者の、薫英や樟蔭東出身の選手がいる全国レベルの女子のチームを見ていたのですが、彼女たちの頑張りともまた全く違っていましたね。彼らは自分ら下手や、もっとできるはずと思ってやっている。そんだけやりたいのなら、私の持っているものでよければどうぞという感じで始めました。」

コミュニケーションが大変ではないですか?
「自分が手話が下手なだけです。後、ろう文化というものをまだわかりきっていないですね。彼らは、その場の共通のものや話の流れがわかっていないのを恥ずかしいと感じで隠す人が多いんです。それはバスケットでも一緒。説明して、わかったというのでやってみたらできなかったり(笑)。でもやっていくうちに変わってきています。」

林監督からみた、ろうバスケ選手の特徴はなんでしょうか。
「体が疲れていても頑張るところは健常者と同じです。でも様々な“状況”への対応はそこまではできていないですね。訓練してはいますが集中力が切れやすいところがあります。でもわかるまでついてくる子もいたり、人によって違いますね。今の段階で教えていることはまだ基本です。中学校で教わったことですね。」

監督業のみで生活されているのですか?
「いえ、自営業です。教師を目指したこともありましたね。でも足りない単位があることに気付いて(笑)家の仕事もありましたし。でも教えるのが好きで、バスケットがしたくて20年前に独立しました。」

代表を3年間見てみてどうですか?
「代表のレベルは上がっていますよ。もともと個人の能力はありました。自分のチームに帰ればスーパースターですよ。でも知らない事があって、それを教えているだけです。力はもともと持っているんです。ただ10人と少ない。もちろん少ないほうが集中できるというメリットもありますが、バレーは6人制で15人代表がいるのに対して5人制のバスケは10人なんです。勝てるもんも勝てなくなってしまうのでそれは何とかしたいです。」

さらなるレベルアップには何が必要だと思いますか
「各クラブの指導者のレベルアップが不可欠です。指導者のいないチームもありますが、その子らも指導者がおったら変われると思います。それから普及は基本ですね。年に1度ろうの子を集めてバスケット・キャンプもやっているのですよ。」

デフリンピックに向けては。
「チームワークはOK。言ったことをやろうとしてくれるし、理解してくれている。アジアでは1番です!でもヨーロッパの高さは未知数だし、アメリカは技術が違います。それにスピード、アーリーオフェンスで対抗できたらと思います。それから相手が小さく守っていたら迷わず3ポイントを打っていきます。マークが軽いからよく入るんですよ。それでチェックにきたらインサイド、というように勇気を持ってやってきたいですね。」

(2004年6月13日インタビュー)

<取材・文 北村美夏>

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