<スプリングキャンプ>

『第2次キャンプを終えて』 (3/7:第2次最終日) レポートはこちら

初日は、ただの円陣にもかかわらず居並ぶ選手のサイズの大きさに圧倒された。そしてさらに、彼らはただ大きいだけではなかった。200cmの山田、198cmの鵜沢もミドルシュート、スリーポイントシュートを確実に決めるスキルを持っている。そして竹内譲次(203cm)をアウトサイドに起用しても、206cmの太田らがインサイドで働くことが出来、本当の大型化がなっていた。215cmの菅谷、206cmの田中はまだ1、2年生ということもあって課題も見受けられたが、それを指摘し、また所属校でも個人メニューをこなす様要請していた。

ガード陣は、センター陣よりジェリコHCの評価は高かった。基本的な身のこなし、ハンドリングなどは一定のレベルに到達していた。それに加えて、瀬戸山、桜井、大宮、蒲谷らは身体能力が非常に高く、ビッグマンの中でも埋もれることはなかった。

指導については、ジェリコHCは「パスは強く」「ボールをもらったらリングを見る」「リバウンドはしっかり飛んで」等基礎的なことばかり言っていた。大学トップレベルの選手達といえどもそれらをきっちりできていないのが現状ということだ。しかし、選手はそれを
素直に受け止めて、最終日にはシューティングなど同じメニューとは思えないほど見違えていた。ジェリコHCが「満足している」と何度も言ったように、短い期間にもかかわらず頼もしい成長ぶりであった。

雰囲気でも、初日は互いに遠慮がある様で、コーチ陣から「声を出していこう」と何度か言われるほど静かだったが、4日目辺りから菅谷ら下級生もプレーで積極的にゴールを狙えるようになり、合間には談笑もするなどコミュニケーションも良くなっていった。

「これだけ言っているのだから成長して当たり前」とジェリコHCは言うが、まとまってこういった指導を受ける機会がこれまでなかなかなかった。徐々に下の年代に広げつつ続ければ、日本のバスケットのレベルが上がるに違いないと思わせた第2次キャンプだった。

『流れの行き着く先』 (3/11:第3次2日目) レポートはこちら

「ほんとは足痛くて仕方ないんですよ」と午後練習終了後ある選手が言った。その他にも3人、ラリー中に足を捻ったが、3人ともテーピングもアイシングすらもせずに練習を続けた。「やってたら治りました」とは、蒲谷。柏木も、「抜けられないでしょ」。痛みをこらえてでも止めたくない流れが、今日の練習にはあった。ラリーだから、という流れではない。ひとつシュートを決める度、ひとつ守り切る度、ひとつアドバイスを受ける度……バスケットが変わっていくのが分かる。惜しくも成功しなかった挑戦に思わず声があがる。身体がどんなに疲れていても思い通りに決まったプレーに心の底から笑顔が出る。メリハリをつけたメニューと最小限の指示で選手の持っている力を引き出していくのがジェリコHCのやり方だ。もっと上へ。その流れの中にいることを、選手達は知っていた。

『第3次キャンプを終えて』 (3/13:第3次最終日)  レポートはこちら

第3次キャンプ参加者は、第2次キャンプ参加者の約半分。その分1人1人にHCの目が行くため、個人が受けた注意も拍手も2倍、成長スピード も2倍という感じだった。それぞれがHCの目指すバスケット、与えられた役割を理解しようとし、例えば5番ポジションとなった田中は、 ラリーをやっている時、人数の都合で交代で休んでいる時間があったが、その間黙々とゴール下シュートを打っていた。また、ジェリコ HCはラリーだけでなくシューティングなどもグループで競わせ、そうすることで集中力を高め、コミュニケーションを図らせていた。 勝とうとすればポイントに気を使うし、楽しくなってきて、体力的に辛いメニューを“やらされている”という感じがなくなる。 そうして多くのことが自然に選手の身に付いていた。4次でのさらなる成長が楽しみである。

『スプリングキャンプを終えて』 (3/21:第4次最終日) レポートはこちら

4週間に渡った合宿のうち、2〜4次合宿を見て思ったことは、選手はタフだということだ。オフシーズン明けにも関わらず、密度の高い練習を技術レベルをほとんど落とすことなくこなした。きつそうにしてはいるが、そこで落ちないプライド、互いに冗談を言い合う余裕があった。それは、実は限界にはまだ達していないともいえるし、全国から集まっている隣の選手に負けたくない、自分の学校ではなかなか味わえない競争が楽しい、という純粋な気持ちもあるのだろう。しかし、どの選手を見ても、リーグ戦やインカレ時のような絞り込まれた鋭さは、体つきにも顔つきにも表れていなかった。彼らは準備次第でもっと高いレベルで練習をすることができたはずだし、世界と戦うためには、合宿が進むにつれて高まっていった集中力をこれからも持ち続けなければならない。それはもちろん簡単なことではない。しかし、この合宿に参加した選手たちは、それを乗り越える力を生むユーモアを持っていた。周りの選手だけでなく、スタッフまでも笑わせてしまう選手たちの姿こそが、最後のジェリコHCの言葉につながったのではないかと思う。
そして、ジェリコHCの指導法は、たった4週間で選手を見違えるようにした。ミートやパスなど基本もきっちり言い続けて意識させ、体力的につらいメニューをやって選手の持っている力をどんどん引き出していた。また、グループでの競争やペナルティーをうまく取り入れ、メニューに楽しさ、いい意味での緊張感を持たせ、選手同士のコミュニケーションもさり気なく深めさせていた。足りないところは指摘し、それが出来た時は誉める。このサイクルを続ければ、きっと日本代表は伸びていくだろうと思わせた合宿だった。

<取材・文 北村美夏>

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