<UNIV2004:新人戦>
〈終〉 『2人のキャプテン』筑波大・#4小松昌弘選手(2年・CF)、東海大・#4石崎巧選手(2年・PG)(6/20:決勝) レポートはこちら

 筑波大の小松はバスケット人生ではじめてのキャプテンを務めた。“らしいことは何もしていない”と謙そんしたが、その彼の態度そのもののような控えめだが熱い気持ちを秘めたチームが最後に栄冠をつかんだ。
「日の当たらないチームがこうして優勝できたのはすごいことだと思います。東海はいい選手ばかりの中、こちらは地道に頑張ったのが結果につながって、良かった。筑波らしいバスケットが出来たと思います。」

 その言葉通り、守っての逆転勝ち。この大会の筑波大の4Qの得点に注目すると、3Qまでに大差をつけた初戦以外の全ての試合で相手を上回っている。
「前半負けているときは、とりあえず我慢しよう、と言っていました。点を取るより、ディフェンスで耐えよう、と。今日のディフェンスでは、尾崎(#5)や木村(#16)が内海(東海#6)の外のシュートをすごくよく抑えた。自分は(東海#14井上に)やられてしまったけど…皆が頑張ってくれました。」

その分、小松はオフェンスで貢献した。苦しい時に1on1を決めてチームを救い、
落ち着いたアシストでアシスト王も獲得した。「アシスト王は、チームプレーでたまたま自分のところがアシストパスになっただけ。もちろん賞を頂けるのは嬉しいけれど、皆のおかげです。」
とここでもチームの皆のことを口にする。
「僕達みたいに背も低く、能力が高いわけではないチームが勝つためには、ディフェンス・ルーズ・リバウンドを頑張ることが必要です。これを1試合続けられたのは、相手も疲れていたし、いつも5人集まったりして慢心をなくしていったからですね。」

 一方の東海大のキャプテン#4石崎巧は、初めてのキャプテンと言うわけではないが、既に3・4年生もまじえた大会でも活躍していることやその謙虚な人柄、要所で決める実力など小松と共通点を持つ。そして“勝ちたい”という気持ちは、小松よりも、いや誰よりも大きいはずだった。
  だが、つかみかけた勝利は手をすり抜けていった。
「今日の試合は…やっぱり、練習の部分で、メンツがそろっているということで必死になれず、試合を想定してやれていなかったということですね。それを今反省しています。」
といつもの静かな口調で言った。

「ディフェンスは、67点とそんなに悪いわけじゃないけれどたまに気が抜けて粘りがなくなってしまった。オフェンスは組織的にやれず、相手がチームで守ってくるのにかなわかったです。自分でも、前半に行き過ぎて後半攻め切れなかった。相手も反応してきて、それでも決めてくる力がなくて、自分で勝負どころで攻められなかったのは悔しいです。
前半は勝っていて、もっと離そうというのはありましたが、結局最初に離して油断して、相手のペースに持ち込まれてやられるという負けるパターンになってしまいました。気持ちが弱かったんですね。
確かになめすぎた、というか…なめていたわけではないんですが、なんというか過信しすぎたところがあった。昨日も一昨日も、自分達の試合が出来れば本当はもっと離せていた。でもそれが出来なかったのは、練習からそれをやってこれなかったからですね。皆高校では練習が厳しくて、特にジュニアのメンバーは“楽に”という気持ちがこの1年はあった。ここ何ヶ月かずっとそうだったけれど、何とかなるだろうと思ってしまっていました。
それから自分でも高校の時より努力していないと感じていました。自分を奮い立たせられず、勝手に落ち込んだりして
…。頭で考えすぎて、体を動かしていなかったと思うので、初心に戻りたいです。」

5点と言う少しの差の要因に、小松は慢心をなくしたことを、石崎は少しの気の緩みをあげた。その結果、今日小松は宙を舞い、一方の石崎は納得の表情で敗戦を受け入れていた。

この大会はまさに終始1点を争う激戦で幕を閉じたが、彼らの好勝負はこれからも続く。
「頑張れば強いチームに勝てる、というのは自信になりました。この“チャレンジャー”の気持ちを持って、上級生と一緒のチームでも頑張りたいと思います。」(小松)
「この大会、この結果を良かったといえるようにしていきたいですね。この大会も過信していて、トーナメントも筑波に負けると思っていなくて、結局負けた。このままいったら次も同じだから、今までの自分にはないリーダーシップを発揮して、チームを盛り上げて行きたいと思います。」 (石崎)

〈7〉 『名物』 (6/20:3位決定戦) レポートはこちら

 日体大は唯一2階席から応援を展開する。もはや関東大学バスケの名物とも言えるバリエーションに富んだ応援でタイムアウトの度に観客を楽しませてくれたが、この日は人数も少なく試合も敗れてしまった。
代表して、よく通る声で大所帯の応援部隊を引っ張った1年生・藤川君に聞いた。
「昨日・今日は下班(Bチーム)の大会で1年生しか来られませんでした。やっぱり人数が少ないと盛り上がりにも欠けるし、やれることも限られて
しまうんです。タイムアウトの時の歌とか“落ち”っていうコントとか。あと、競ったりピンチになると“デンソー”という応援をするのですが、これも人数がいないとできないんです。」
と残念そう。だが、彼らにはもっと残念な事がある。
「今回は応援でしたが、やっぱりコートでやりたいのでこれからまた頑張りたいと思います。」
部員が100名を超える中でユニフォームをきる権利をつかむのは容易ではないが、こうした選手1人1人が名門・日体大を支えている。
〈6〉 『春の秋風』法政大・#5高崎陽平選手(2年・F) (6/20:3位決定戦、7位決定戦

  途中出場ながら、リバウンド・3ポイントシュートで貢献した高崎は、1試合ごとにプレーに自信が出ていった。
「リバウンドはそれしかないですから、自分には(笑)。この大会で思ったことは、やっぱり勝つのはディフェンスのチームだということ。最後まで自分達のリズムで出来た方が強い。筑波などもコーチが言うことをきちんとやっている。これから、個人ではなくてチームのディフェンスからやっていきたいですね。
自分としては、3ポイントシュートはもともと得意なんですよ。ただ速攻されないように無理して打たないだけで。
これからは1on1の能力を上げたいです。あとはリバウンド。さらに磨いて、リバウンダーになりたいと思います!」
タレント揃いの法政大に、また1人頼もしい選手が加わった。この大会で起こした風が、秋のリーグにつながってゆく。
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〈5〉 『2つの顔のルーキー』東海大#15小林慎太郎選手(1年・PG) (6/19:準決勝) レポートはこちら

東海大のルーキー小林は、普段はお茶目なキャラクター。いつも積極的に声を出し、先輩からもよくちょっかいを出されている。しかし、18日の準々決勝のハーフタイム、コートの外の廊下を1人走っていた小林の顔は別人だった。こわばっていたのか、集中していたのか。ただいつもの笑顔からは想像できないほど厳しい表情をしていた。

「走っていたのは陸川監督に“準備しとけ”って言われていたからです。動いておかないといきなり入るのは不安があったので。結局昨日は出ませんでしたけど、流れやタイミングがありますからね。昨日起用された#18西垣の持ち味はシュートなのに対して、自分はディフェンス。昨日は点が欲しくて、今日は守りたかったんでしょう。今日は出てすぐシュートも決められたしスティールもいくつか出来たし、持ち味を存分に発揮できたと思いま
す。」そのせいか、コートを走る小林にはいつもの笑顔に戻っていた。「いや、がらにもなくすごく緊張していたんですが、先輩が盛り上げてくれたんですよ。」

その先輩の後押しを受け、試合終盤では司令塔も任された。
「オフェンスではカットインもシュートもバランス良く、というのを求められています。そう、#4石崎さんみたいな感じになって欲しいんだなって感じます。もちろん少しでも近づけるようにしていますが、でも同じことをする必要もない。元気さ、盛り上げ、その中で司令塔を務められたらいいなと思います。練習ではいつも石崎さんと1on1とか組まされて、勉強になっていますよ。
ディフェンスでは、“気付き”に気を付けています。相手が苦手なところに気付いてそこに追い込むとか。そのために、周りを見て情報収集することを怠りません」

いいディフェンスをするには、その情報収集に加えて地道でつらい練習を要する。それをあえて売りにするのは、ある気持ちを秘めているからだ。
「自分は能力が高いわけじゃない。だから“気持ち”を大事にしています。声を出すことやルーズボール、自分にはそれしかないんです。うまいわけじゃないのにコートに立てるのはそこを見てくれている人がいるからだと思うし、それに応えたい。
(出身の小林高校は3年時全国大会出場なしのため)自分のことを知っている人は少ないかもしれないけれど、無名だから下手とか有名だから上手とかないと思うんです。そのレッテルみたいなものを剥がせたらなと思います。」

明日の決勝戦では、きっと同じ気持ちでプレーしてきた小林高の同級生・吉田周平のいる筑波大とあたる。
「もちろんコートに立ちたいけれど、立てないときもある。力がないから。力があったとしても出られなければ力がないのと同じなんです。そういう時は、ベンチから声を出すこと、それから流れが悪いときにどこが悪いかをアドバイスしてあげられたらと思います。そして出られたら、必死さを見て欲しいですね。
筑波には、この前のトーナメントで負けている。自分は1人だけメンバーに入っていてその悔しさを経験しているので、是非倒したいです。」
その試合が終わった時、“東海に小林がいる”そう思わせるようなプレーが見たい。
〈4〉『厳しい?楽しいですよ。』東海大#4石崎巧選手(2年・PG) (6/18:準々決勝) レポートはこちら

  「走れ!」石崎が大きな声を出している。
  その一方で、交代時や仲間のミスの後には笑顔を見せる。「あいつ試合前とか“楽に行こ、楽に”って言うんですよ(笑)」(#8松山)。そのどちらもが今までの試合では見られなかった姿だ。
「キャプテンとして…というのは特にないです。高校の時もそうでしたが、皆能力があって自分で考えられる選手ばかり。まとめる時はまとめますが、全てをやる必要はないんです。明るいやつばかりで雰囲気は最高ですよ。ゲームメイクするにしてもコミュニケーションが取りやすくてやりやすい。本当は上級生の中でも言えないといけませんが…。みんな仲が良くて、相手も知っているやつばかりだからやっていておもしろいですね。」

 この戦いを“おもしろい”と表現したのは石崎が初めてだった。
「今日の試合は自分へのマークが厳しい中で思うようにできませんでしたね。悔しいし良い勉強になりました。それから苦しい時に他の選手が頑張ってくれた。(日大の206cmのセンター)#5太田へのダブルチームディフェンスは効いたと思います。最初からやると慣れてしまいますが、やっぱり勝負どころではプレーさせたくなかったので。
竹内(譲次)がいないのは、確かにキツイです。でもいないのをどうこう言ってもしょうがないから。あいつも向こう(A代表欧州遠征中)で頑張っているだろうし、日に日にうまくなっているのがわかるので負けたくない。“いないから負けた”って本人に言われたくないですしね。
それでも他のチームが打倒東海!ときているのは色々なところで聞いて、嬉しいけれどプレッシャーもありますよ。優勝して当たり前、みたいなところがあるから。でも、一度コートに入ってしまえば楽しいし、気になりません。」

 そう気持ちでは思っていても、体は彼のプレーのレベルを如実に表している。試合後は何箇所ものアイシング、スタッフの手を借りての丹念なストレッチを行なう。
「いつものことですよ。気を使っている?いや、やらないと…ハードですから(笑)。今日は久々に休めましたけどね。いつもは少しセーブして40分もたせているんですが、今日は自分がやらなきゃって気負いすぎて、ディフェンスでボールを取りに行きすぎたり、後勝手に突っ込んでいっちゃったところもあってバテてしまいました。もう少し抜くところも覚えないといけないですね。
あと2試合、相手のプレーをさせないディフェンスを見せたいです。後はガードとしてしっかりゲームメイクすること。やっぱり試合が一番練習になりますからね。」
  “うまくなれる”と思えば、この厳しい戦いも、彼にとっては楽しい道なのだ。
〈3〉 『層は厚いけど』拓殖大・#14小下寛史選手(2年・G) (6/18:準々決勝) レポ

 立ち上がりは互角の展開となるも、拓殖大のキーマン#4長谷川がファールトラブルになると一気に法政大のワンサイドゲームになった。2桁のビハインドとなってからの出場。しかし、小下のプレーはその点差を忘れさせるほどすがすがしかった。
「いつもはあまり出場機会をもらえないのですが、今日は前半の終わりと後半出られたので持ち味のディフェンスとスピードを生かしたプレイを出せるよう心掛けました。特に後半はチームのテンポが悪くシュートを打てていなかったので、自分のプレーで流れを変えられたらと思って積極的に動きました。カットインはフィニッシュを決められませんでしたが…」
と笑う。

そして2年生らしく、長谷川のこともこう気遣った。
ートはこちら
「やっぱりチームの軸だけれど、調子の悪い時もある。そういう時頼りすぎないで、皆でやっていかないといけないですね。ベンチの声なども含めてチームで戦うのが拓大のバスケットなので、明日・明後日はそういうところを見せたいです。」
 
 拓大と言えば、清水誠太・伊藤拓郎・熊谷渡とレベルの高いG・Fが3・4年にずらりと顔をそろえている。その中で175cmの小下までは今はなかなか出番がまわってこないが、こうして与えられた時間で自分のプレーを出し、ベンチにいてもチームのことを考えられる選手が控えているのはチームにとって大きい。
〈2〉 『逆境で勝て』早稲田大 (6/18:準々決勝) レポートはこちら

 
早稲田大#20近森の左目の下が青く腫れているのがわかるだろうか。
「いてって思ったらこうなってた。」
この傷が、入学したばかりのパワーフォワードにかかる負担、そして早稲田大というチームの状況を物語っている。

 この日、ともにインサイドを担う2年生#5田上が第2クォーターはじめに左足首を痛めるアクシデント。インサイドで体を張るのは近森1人になり、さらにコートに立つ選手の比重も1年生中心になった。結果、ディフェンスでマイボールにしてもオフェンスを思うように組み立てられず、対照的に#4小松・#5尾崎という2人の2年生が軸になる筑波大に逆転されると再びリードを奪うことはできなかった。
 その苦しい展開のもと、ボールをひたすらゴールに運び続けたのがこの近森だった。2ポイントシュートは45本中27本、得点も54点中28点と全体の半分以上が彼によるもの。その1on1にチームはずいぶん助けられたが、裏を返せば苦しい時に皆が共通してこれをやる、というものがないとも言えた。もちろん最初に固めるべきディフェンスでチームとしてまだ出来ていない約束事もあるのだろうが、それがなくてはこういった接戦をものにするのは厳しかった。

  オフェンスで焦り、そのミスから相手に楽なシュートを打たせてしまうトーナメントと同じ負け方。だが幸い、このチームには順位決定戦が残されている。そして、点差が離れてもゴールに向かうことをやめないこの男がいる。
  あと2試合、チームとしての成長が見たい。
〈1〉 『気を抜いたら僕らが来る』千葉商科大 (6/14:1回戦) レポートはこちら

 関東4部リーグに所属する千葉商科大は、予選ブロックAの第1シード。順当に勝ち上がってきたが、この本戦1回戦では明治大に数字的には大敗。しかしベンチの明るいこと。一見ふざけているのとかと思うくらいのにぎやかさだった。

 背番号6を付けていた平田卓也(2年・写真)は言う。
「今日は監督が来るはずだったんですが、来られなくなってしまいました。だからみんなで話し合ってゲームを進めていたんです。相手がでかいからゾーンにしよう、とか。コートの中でも外からも、とにかく声を掛け合っていこうと。ただ、タイムアウトのタイミングなどは、やはり皆やってきたバスケットや経験に差があるから、わからない人ももちろんいる。でもだからと言って黙るよりは、何でもいいから盛り上げたほうがいいと思って、声出ししていました。」

その“声”は商科大の目標達成にもつながった。
「そうやって声を出すことは、リラックスにもなるんです。そのおかげで、点数は開いたけれど、“相手を苦しめる、少し気を抜いたら僕らが(上のリーグに)あがってくるんだぞって脅かす”という目標は達成できたんじゃないかと思います。相手、ファール多かったでしょ?」

と満足な表情を浮かべた平田。“負けたけれど得たもの”は、他にもあった。
「そういうチャレンジャーの気持ちを持ってやれたこと、それから最後に出したB・Cチームの子が“コートに立つ”という経験を出来たことはすごくよかったです。それから何より1・2年生の絆を深められたこと。今そうやって信頼を作ると、次の1年が2年と仲良くなる、イコール自分たち新3年生とも仲良くなる、というようにチームワークにつながると思うんです。」

そのチームワークを武器に、次は千葉リーグに出場する。
「千葉リーグはどちらかというとユニフォームをもらえない人のためのもの。だけど、特に僕らの代から言い出したのですが、普段レギュラーに入ってるやつも含めてしかっり練習しよう、って。大学に入ると、高校より練習日数が減って気持ちが緩んでしまう人もいます。バイトだから部活休んだりとか。もちろん1人暮らしで大変な人もいると思うけれど、それをわかった上で、みんなが部活のある日は部活をしっかりやるという意識のあるチームにしたいですね。」
最後の円陣も息がぴったり。1年後、2年後にはさらにまとまった“商科大のバスケ”を見せてくれるかもしれない。

<取材・文 北村美夏>

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